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最終選考結果 カクヨム甲子園⑥

冬生まれだけど寒いのは苦手だ。
十二月末、神奈川県の気温は十二度。この一日だけ、私の大好きな夏が帰って来た。
中間選考を突破した「溺れる」は、最終選考の結果、ロング部門の優秀賞に選ばれました。

【高校生限定】カクヨム甲子園2025【ナツガタリ】最終選考結果
https://kakuyomu.jp/contests/kakuyomukoshien2025


去年より、感謝したい人が増えました。

この作品は元々高校の文藝部の部誌に寄せた作品です。提出した時に、当時編集作業をしていた先輩に「本当に載せていいのこれ?」LINEが来ました。それと同時に当時の部長から「○○から、明が心配なんだけどってLINE来たんだけどwwww」と来ました。続けて部長は、彼の口癖であり、希望ケ丘高校文藝部が掲げる唯一の規則を言いました。
「文藝部の部誌にはいかなる検閲も縛りもない」と。
そうして部誌には、カクヨムに投稿されているものとほぼ同じ原稿が掲載されました。セックスって二回も書いてある小説が、部員に見守られながら学校の印刷機で刷られていく様は奇妙なものでした。

この「溺れる」は、当時十五の少女が提出してきた小説に心底狼狽えて、少女を心配する青年と、その少女を面白がり、背中を押してしまう青年の二人がいて、この状態で完成を迎えられたのだと思います。
そして、完成したのちに読んでくれたたくさんの人たち。同級生に、後輩、先生、中学の先輩…。そして、ここにいるカクヨムでの読者の皆さん。たくさんの人が褒めてくれたから、カクヨム甲子園に出そうという気持ちになりました。

たくさんの人に言葉を送りました。たくさんの人が言葉を贈ってくれました。

黒ーんさん、伊草いずくさん、カクヨム運営公式さん(スタートダッシュキャンペーンに当選した)、素敵な応援コメントをありがとうございます。まだ返信が書けていないものもあり申し訳ありません。
ikkiさん、裏窓秋さん、カクヨム甲子園運営公式さん、素敵なコメント付きレビューをありがとうございます。
そのほかにもたくさんの、読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
カクヨム甲子園運営に関わる皆さん、審査員のあさばみゆき先生、本当にありがとうございます。


――
 『光台高等学校文芸部』は、良くも悪くも、あの恋をした夏でしか、その人とは対等に並びえない、その人の後ろを歩き欠片を拾うことしかできない、ちっぽけな私でしか書けなかった物語です。
 だからこの作品は、いつまでもミステリーではなく現代ドラマです。
――

これは私の去年のカクヨム甲子園最終選考結果後の近況ノート上の言葉です。

(カクヨム甲子園の最終審査結果
https://kakuyomu.jp/users/ienekononora0116/news/16818093090661142558

私は去年、五作品を応募しそのうちの一作「光台高等学校文芸部」が中間選考突破、最終選考落選という形で終わりました。
あの時は、決してミステリーを名乗る作品など書けませんでした。

今年、優秀賞をいただいた「溺れる」はジャンルをミステリーに設定しています。
血と、吐瀉物と、裸を描きました。

「光台高等学校文芸部」が、恋をしている私にしか書けない物語だとするならば、「溺れる」は、恋をしている私では書けない物語です。
私はミステリーという彼の聖域を汚しました。
私は知って欲しかったのです。恋する乙女は見せない、肺の底のぐらぐらと暗い部分を、弱く柔らかい部分を。

圧倒的強者と相まみえる覚悟が、私の筆を強くしました。

去年の最終選考でのはやみねかおる先生のコメントも常に頭にありました。「光台高等学校文芸部」で私は人を安易に殺しました。ひょっとすると安易ではない殺人は、殺人をしてみなければ書くことはできないのかもしれません。「溺れる」での殺人は安易かもしれません。それでも私は頬に死の火花が当たるのを感じられるまで、リサーチを尽くしたと自負しております。

オリバーの一人称では彼のことを掬いきれないと思い、海外文学的な三人称神視点での執筆を進めました。幼いころから洋画や翻訳本に親しみがあったので、やりすぎでない塩梅を探れたのではないかと思っています。


最近、自分でも怖くなるくらい気分が落ち込んだり、上がったりします。今日できたことが、明日できなくなっていたらどうしようと不安になります。寒さが嫌いです。私が凍えて動けないうちにみんなが先へ行ってしまうからです。持久走でビリでした。
この作品は、カクヨム甲子園は、鬱陶しいほどの熱を持って、私を夏に引き戻してくれます。

――
 これからも私は、高校生活で、様々なものに出会い、学んだり、恋をしたり、傷ついたりするでしょう。

 来夏。私はまた何かを追って、この場に戻ってきます。
――

別れて、足踏みして、勘違いして、傷つけて、私はここまで生きてきました。
私は戻って来ました。夏の日の、自分の短い影を追って。
来夏もきっと。

2件のコメント

  • 優秀賞おめでとうございます。
    希望が丘なら来年の文化祭に行こうかしr(((ダメだろ
  • ありがとうございますー!!ぜひ来てください
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