以前職場にMさんという僕より少し年上の男性がいました。僕としては非常に珍しい現象なのですが、そのMさんと僕はわりと気が合いました。Mさんもサラリーマンタイプではなく職人気質の人だったので。Mさんは僕が小説家を目指していることも応援してくれていました。Mさんは僕の影響で本をよく読み始めるようになって、僕がおすすめ本として池井戸潤さんの小説『空飛ぶタイヤ』を貸すと「面白い!」って大絶賛していました。個人的に『空飛ぶタイヤ』は『下町ロケット』よりも傑作だと思っています。
Mさんと会話している時、ちょくちょくMさんの奥様の話が出てきました。僕は他人の夫婦の話を聞くことが好きな、「夫婦フェチ」なところがあります。さまぁ~ず大竹さんが話す家族の話とか、すごく好きです。家族の話になると急に挙動不審になって照れ出すダウンタウンの松ちゃんも好きです。そして、Mさんが時折ぽろっと「子供欲しいよなあ」と漏らすこともありました。
MさんとMさんの奥様の誕生日は近いようで、その誕生日が近づいてきたある日僕は閃きました。ご夫婦宛てのプレゼントの内容を閃いたんですね。普通の人間だったら絶対しないようなプレゼント内容でした。
当日、僕はお菓子と一緒に奥様宛てのプレゼントをMさんに渡しました。これを奥様に渡してください、と。ちなみに僕と奥様はまったく面識がありません。
奥様はさぞかし驚かれたことでしょう。見ず知らずの人間(Mさんから小説家を目指している人間がいるということは聞いていたと思いますが)からあんなプレゼントが届いたのですから。
僕が用意したのは、1歳か2歳ぐらいの子が着る、男女兼用の水兵さん的なセーラー服でした。ちなみにその段階で奥様が妊娠されているという情報は皆無です。これは僕からMさんと奥様へのメッセージですね。僕は英語で『美しい奥様へ。元気なお子さんを』というようなニュアンスのメッセージをつけました。
奥様はびっくりですよね。会ったこともない人間から服をプレゼントされ、その服のサイズがめっちゃ小さいんですから。「なにこれ、服? えっ、ちっちゃ!?」ってなったと思います。
後日Mさんに話を聞くと、奥様はちゃんと笑ってくれていたようです。安心しました。
僕はこういう、誰かに何かをあげることが好きです。もらうことよりあげることが好きです。誰かがそれを受け取った時に出る反応を想像することが好きです。クリスマスの時期にそれぞれ違う言葉を書いたクリスマスカードをたくさん用意して職場の人に「ご自由にお持ちください」と配ったこともありました。
僕は今「サプライズ・プランナー」という、依頼を受けて誰かを喜ばせるサプライズを企画し実行するお仕事の小説を書いています。まさに僕の嗜好を反映したような内容ですね。書いていてすごく楽しいです。主人公の大空紅音も誰かを笑顔にすることが大好きな人間です。一言で言えば、「粋」な人間です。
このあまり聞かない「サプライズ・プランナー」という職種は(実際にそういう職種があるかどうかも定かではない)、小説ともとても相性が良いです。サプライズをストーリーのどんでん返しとして設置して、読者へのサプライズとして演出することもできるので。小説家は読者を「驚かせる」ことが仕事ですからね。