「💞黄金の檻」、囚われた愛、天才の執着が彼女を狂気に変えるまで

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 囚われた愛、天才の執着が彼女を狂気に変えるまで

 霧島悠真は三十歳を過ぎても、鏡に映る自分の顔が信じられなかった。細い首、華奢な肩、大きな瞳に長い睫毛。誰が見ても十代後半にしか見えないその容姿は、彼を永遠に「子ども」として扱う呪いのように思えた。声も低くならず、すぐに震えてしまう。

 自己肯定感など、とうの昔に死に絶えていた。彼は自分が価値ある存在だと思ったことは一度もない。ただ、能力だけは異様に高かった。複雑なアルゴリズムを一瞥で理解し、膨大なデータを頭の中で並列処理し、誰も気づかないシステムの致命的欠陥を数時間で特定する。それが彼の唯一の武器だった。そしてその武器で、彼はすべてを手に入れようとした。誰かに必要とされるために。誰かに捨てられないために。

 佐伯千歳は二十七歳。明るく、誰にでも優しく、笑顔が絶えない女性だった。だがその笑顔の裏には、常に小さな不安が潜んでいた。自分は本当にここにいて良いのか。自分の存在は誰かに迷惑をかけていないか。そんなささやかな自己否定が、彼女の心の奥底に根を張っていた。だからこそ、彼女は他人を傷つけることを極端に恐れた。拒絶すること、嫌われること、それが何よりも怖かった。

 二人が初めて深く関わったのは、大規模なシステム移行プロジェクトだった。悠真は当時、子会社の技術部長として全体を統括していた。彼の業務は多岐にわたった。朝から膨大なログデータを解析し、数百行のコードを一瞬でレビューし、ベンダーとの交渉では相手の論理の穴を的確に突いて有利に進める。

 会議ではほとんど喋らず、ただ淡々と事実と数字を並べるだけだったが、その内容は常に完璧で、誰も反論できなかった。部下たちは彼を「天才」と呼びながらも、どこか距離を置いていた。幼い顔立ちと気弱な態度が、威厳を欠いていたからだ。

 千歳はそのプロジェクトに新メンバーとして配属された。彼女の役割は、ユーザー部門との調整とドキュメント作成だった。彼女は、細やかな気配りと、誰にでもわかりやすい言葉で説明する能力に長けていた。

 ある日、ユーザー側から無茶な要件変更が持ち込まれたとき、千歳は一人で対応に追われ、深夜まで残業を続けていた。悠真はそれを見て、静かに彼女の隣に座った。

「手伝います。どこが詰まってるの?」

 小さな声だった。千歳は驚いて顔を上げた。悠真は画面を覗き込み、数分で問題の核心を指摘した。そして一時間後には、完璧な代替案を提示していた。千歳は目を丸くして言った。

「霧島さん……本当にすごいです。私、こんなの絶対無理でした。先輩がいなかったら、このプロジェクトは絶対に死んでました」

 その言葉が、悠真の心に深く突き刺さった。誰かに「必要」とされた。誰かに「いないと困る」と言われた。初めての感覚だった。

 彼の胸の奥で、何かが音を立てて動き始めた。千歳はただ感謝しているだけだったが、悠真の中ではすでにそれは「自分を肯定してくれる唯一の存在」として千歳を神聖化し始めていた。

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