異世界ファンタジーは多い。だが、その世界が“力学で動いている”と感じられる作品は少ない。
今日は、以前ランキング巡回で読んだ作品を紹介したい。
過去におすすめした作品について、一読者としての率直な感想を語ろうと思う。
『異世界コンサル株式会社』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880227319この作者の作品は、以前ランキング巡回ログ #10で紹介した作品でも感じたが、社会の力学を丁寧に描く作風が特徴的だ。
この作品は、異世界ファンタジーの世界に「経営」と「戦略」を持ち込んだ作品だ。
主人公は異世界でコンサル会社を立ち上げ、冒険者向けビジネスを展開していく。
作中では、冒険者コンサル業務や冒険者用の靴の製造など、かなり現実的なビジネスの話が描かれている。
特徴的なのは、本作がかなりリアリティ寄りの作りになっている点だ。
新しい仕組みを導入すれば既得権益との衝突が起き、交渉や政治的な駆け引きが必要になる。
冒険者向けの靴一つ作るにしても、既存商人との競合、流通、価格、需要を考えなければならないのだ。
そうした“反作用”まで含めて、社会の力学として描かれている。
単に現代知識で無双するのではなく、市場分析、需要の見極め、交渉、政治的な駆け引きなど、地に足のついた形で物語が進んでいく。
読んでいると、実際に市場を相手に仕事をしているような感覚になる。
これはもはやファンタジーではなく、経営シミュレーションに近い。
さらに印象的なのは、問題を安易に魔法で解決しないことだ。
困難に直面したときも、力技ではなく分析や戦略によって状況を打開していく。
ただ、この作風は好みが分かれるところでもある。
ファンタジーとリアリティの融合はバランスが難しい。
ファンタジー寄りならご都合主義に見えやすく、リアリティ寄りなら説明が増えて重くなる。
本作は明確に後者に振れている作品だ。
そのため、爽快系の異世界ファンタジーを期待して読むと、やや重く感じるかもしれない。
しかし、異世界作品を読んでいて
「設定が甘いな」
「少しご都合主義が強いな」
と感じることが多い読者には、かなり刺さるタイプの作品だと思う。
私自身はまさにそのタイプなので、社会構造まで踏み込んだ描写を非常に面白く読めた。
世界が「作者の都合」ではなく「社会の仕組み」で動く物語は、読んでいてやはり面白い。
おすすめレビューでも☆3を付けている。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880227319/reviews/822139845232552476ただし、一点だけ気になる部分もある。
この作品は700話以上書かれたうえで、未完のまま更新が止まっているのだ。
この広がっていく物語を最後まで見届けたかった。
長編作品では、物語を最後まで描ききれるかどうかも重要な要素だと感じる。
もっとも、これは作品そのものの出来とは別の話ではある。
ランキング巡回をしていると、こういう“異世界に都合ではなく力学を持ち込んだ作品”にも出会う。
さて、次はどんな作品に出会えるだろうか。
今日もまた、ランキング巡回の続きだ。