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【感想のお部屋】 『七夕夜行と、五色そうめん』 その2  〜 闇を照らす灯火と、鮮やかな紅白の影 〜



※※ はじめに ※※

この小部屋を見つけてくださって、ありがとうございます。
こちらは、わたしがkou様の作品を読ませていただいたときの、感想などを綴っているお部屋です。
今回はこちらの作品です。

『七夕夜行と、五色そうめん』 kou 様

https://kakuyomu.jp/works/2912051603924553748
※※ 以下、ネタバレを含みます ※※

(この感想を書いている時点の最新話は『第8話 思わぬ味方』です)









⚫︎ もとい。



『七夕夜行と、五色そうめん』 その1では、第3話までの感想を綴りましたので、その2は第4話から始まります。
……と思って読み返したら、第3話は「一気にホラー小説になりました!」しか書いていませんでした笑
ということで、その2は第3話から始めたいと思います。



⚫︎ 斜め上の事態

第1話で、勇輝くんが作った「完璧なそうめん」によって天の川の通り道が開かれ登場した“星狐”さん。この町に起きている“結界の危機”を伝え、“忘れ去られた影”が逃げ出そうとしていることを伝えてくれる。そしてそれを防ぐ方法も教えてくれたのは星狐さん。

   「それを防ぐ唯一の方法がある。天の川の星が最も美しく輝く――つまり、21時までに、完璧な調和を持った五色そうめんを、天の川祠へお供えするのだ。そうすれば結界は一気に力を取り戻し、影たちを再び封じ込めることができる」
   (第2話より)

星狐さんの言葉を信じ、勇輝くんと澪さんは夜の町を走っているわけですが。


   「そんな……馬鹿な、あり得ん……」
    勇輝の鎖骨のあたりに小さな前足を乗せ、外の様子を覗き込んでいた星狐が、戦慄したようにかすかな声を漏らした。そのふさふさとした白い耳が、不穏な焦りに細かく震えている。
   「星狐……?」

   (第3話より)



えー!?

星狐さんのいうことを信じて、ここまで走ってきたのに、水先案内人たる星狐さんの想定を超えてる事態だったとは…。
この先、どうなる?! とわくわくします。



⚫︎ 大正文学の“黴”の匂い

第3話のタイトルは「這い出た影」。
kou様ご自身が仰っていた「隠れる、逃げるしか選択肢のない怖さ」を表現されたところです。この「隠れる、逃げる」の描写を読んで、わたしはkou様の過去作『巨頭の村に囚われて』を思い出しました。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330665796514544 )

   ズル……、ズル……

   会話を拒絶するように、不快な這いずり音がすぐ近くまで迫る。
 
  (中略)

   冷たい泥の匂いと、嗅いだこともないような古い埃の匂いが、鼻腔をツンと突く。

   (第3話より)

“何か”が這いずるような音と、古い埃のような匂い。
“会話”も成り立たない相手。
このシーンを読んだ時わたしは、小さい頃に学校の図書室に通って夢中になって読んだ、江戸川乱歩の少年探偵シリーズを思い出しました。
乱歩の描く、得体の知れない何かが見えないのに、たしかに“そこ”にいる恐怖と、長いあいだ風ひとつ通らず、淀みつづけていたような、黴臭い大正文学の空気感。
怖がりながらもわくわくした、あの時の読書を思い出していました。



   きゅっ、と澪が勇輝のシャツを握りしめる手の力が強くなった。
    澪はぎゅっと目を閉じ、小さく震えている。勇輝もまた、奥歯を噛み締め、呼吸を極限まで薄くした。   

   ドクドク、ドクドク、ドクドク

   (第3話より)

うーーん、この緊張感よ!






⚫︎ 「希望」であり「目印」にもなる “聖なる灯火”

勇輝くんのやさしい心と、たくさんの愛情あふれる“手間”によって作られた「五色そうめん」は、作中で繰り返し、温かなものとして表現されます。

   いかん、タッパーを隠すんだ。そのそうめんは聖なる灯火だ。見つかってしまうぞ
   (中略)
   タッパーの隙間から漏れる五色のオーラは温かい。
   けれど、同時にそれは、闇の中に灯された一本のロウソクのように、怪異を惹きつける目印でもある。
   (第3話より)



“結界”にとっては“希望の火”であるからこそ、“忘れ去られた影”たちには“自分たちが再び封じ込められる劫火”にもなりうる訳で。
「五色そうめん」をなんとしても守りながらの、心臓がバクバクしハラハラする。手に汗握る描写が続きます。




⚫︎ 脳内会議、3つの議題

    勇輝はきつく目を閉じ、心の中で「あっちに行け、あっちに行け……!」と狂ったように祈り続けた。
   (第3話より)

が通じたのか、「隠れる」空間からなんとか這い出せた二人と一星狐。(星狐さんは“匹”で数えていいのかわからず)
タッパーの中身の「五色の具材は一糸乱れぬ美しさを保ったまま」を確認して目的地へ進みます。

その後に出てきた次の一文で、物語は先へ進んでいるのに、わたしは一緒に進めずに縫い付けられたようにとまりました。
  
   自動販売機の灯り、ゴミ置き場の網、放置された自転車。
   (第4話より)

本文にも書いてある通りに「昼間はなんとも思わない日常の景色」なのですが……。


(ここから先は、わたしの脳内会話をお楽しみください)


ん?ちょっと待って……。なんか、気になる。


・自動販売機 → 『お天気自販機』 の “自販機”
・網 → 『静か餅とふたりのメロディ』 の “箕”
に読めなくもない? どちらの作品も大空兄妹の登場作品だしね。


 もしこの読みがあっていたのなら…3つ目の
・“自転車”は、一体どこから?


 んーーー。
kouさんの過去作全てを読んでいる訳ではないけれど。

もしこのモチーフたちが過去作から、だとすると。



『GW怪奇譚 腐れ縁の絆』の冒頭部分が浮かぶなぁ。


(脳内会話、終わり)

さて、わたしが視線を吸いつけられたこの“自転車”は、どこかで伏線回収がされるのか。
はたまた、「ありふれた日常の景色」だったのか……。



⚫︎ 「見つかった!」
  
第3話であんなに怖い思いをした“忘れ去られた影”に、とうとう頭上から見つかってしまいます。
   
   「お兄ちゃん、来るよ!」
   「澪、こっちだ。走れ!」
   (中略)
   勇輝は澪を自分の背中に隠し

   (中略)
   澪をかばうように

影から逃げる時、何度も妹の安全を気にかけ、守る姿が描かれます。

それと同時に、

   決して傾けてはならない、落としてはならないタッパーを抱えて
   (中略)
   タッパーを固く抱きしめ

「五色そうめん」を水平に保って逃げ続けます。

勇輝くんのその健気さに、もう泣きそうです。

    背後からは、アスファルトを爪で引っ掻くような無数の足音が、確実に距離を詰めてくる。
   (第4話より)

この描写、とても好きです。

ここでは「影の犬たち」とは書かずに、“追いかけてくる音”だけで表現されている。どんどん追い詰められている状況を、逃げている方も“音”で感じている。すごい描写だと思いました。

    ──もう、逃げられない。
   (第4話より)

あーー、どうなるのぉぉヽ(;▽;)ノ



⚫︎ キタ――――――――――ッ!!

   ・一振りの薙刀
   ・鮮やかな紅白の影
   ・「下がってなさい!」(命令口調!)
   ・凛とした少女の声
   (第4話より)

もう! にやにやが止まりません!!
わたしの足(目?)を止めた、あの“自転車”関連のキャラクター様では??!




ちなみに。
このキタ――――――――――ッは、どこかの“天文学的確率”ではなく🤭

いや、むしろ、危機一髪に影の犬を弾き飛ばしてくれたのだから、天文学的確率だったのでは?



と。
ここまできて。
本日歩んできた、わたしの後ろにできた道を振り返ってみた時。



いやいや、これ何文字行ってしまったんでしょうか汗
現在の最新話が第8話なので、せめて6話くらいまで【感想のお部屋】を進めるつもりだったのに。



その1で書き尽くせなかった第3話に戻ったにしたって。
一歩進んで二歩下がる、歌のようではないですか。

うむむ。

ということで。
今回は『七夕夜行と、五色そうめん』第3話から第4話までの感想をお届けしました。



では、また『感想のお部屋』でお会いいたしましょう👋
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。








kou様へ

(【感想のお部屋】ではまだお名前を出していないけれど、これだけは先に言いたい笑)

蓮くんと灯里さんを、再び書いてくださって
「ありがとうございますぅぅぅ✨」

第3話は本当に手に汗握る回で、ドキドキしっぱなしでした。
続く第4話ではとうとう影に見つかってしまい、どうなるのか!? というときに
“一陣の強風”が吹く。

その登場の仕方。実にかっこいい!! 素敵!

↑でも書きましたが、“自転車”という言葉に足踏みした、数分前のわたしを褒めてやりたい!と、気持ちがとても昂りました。

“自販機”“網”“自転車”が偶然のものだったとしても、読んでいるときに、少し前に頭で思い出していた『GW怪奇譚 腐れ縁の絆』が、読み進めている文章に出てきた時の嬉しさは、言葉では表現できません。
第4話では、灯里さんと明言されてはいなかったけれど、これだけの要素が重なれば、ね🤭 
とてもとても楽しい読書体験でした。


「七夕にそうめんを食べる風習」
わたしも存じ上げませんでした。あーあ、わたしも影の犬を呼び込んでいる一人、ということになってしまいますね汗
「台風にコロッケ」も、kouさんのコメントで知りました。

台風といえば、
その昔。台風が来るという半日ほど前に、近所のおばあ様が家にやってきて。
「今のうちにこれを煮ておきなさい」と、かぼちゃを一つわたしにくださいました。
停電になっても、避難するようなことになっても。
“かぼちゃの煮付け”を作っておけば、とりあえず、飢えを凌げるという先人の教えに触れて、なんだかじーんとしました。

今はコンビニもあるし、缶詰やフリーズドライの非常食もあるけれど、
「今のうちに煮ておきなさい」と渡された、無骨で温かな愛をふと思い出しました。

kouさんの「台風にコロッケ」の言葉で、“忘れ去られていた”大切な思い出に触れることができました。
ありがとうございます。


絵本『しばわんこの和のこころ』シリーズ!

あれはかわいい本ですよねぇ(=´∀`)人(´∀`=)

「みけにゃん」「しばわん」
あー、しばらく触れていないです。読みたくなりました。

「この日本に生まれて良かった」と、実感を込めて語られているkouさんのお気持ち。わたしもそう思います。
小さい頃、初詣には振袖を着てお出かけしていました。
両親や叔父叔母、従姉妹たち。みんなで着物を着てお出かけする元旦が大好きでした。

振袖は袖が長いから振る舞いにも気をつけないといけないし、草履は足の指が痛くなるし。
小学生のわたしには窮屈この上ないものでしたが、わたしは着物を着るのが大好きでした。
今でも着物は大好きですが、日常ではなかなか着る機会がありません。
だから夏になると、俄然、浴衣を着たくなります。日常着の着物として一番ハードルが低いと言いますか。
花火大会でもお祭りでもないけれど、家で着ています。
長年着ていい感じにへたれてきた木綿の浴衣は、寝巻きにもしています。
日本の高温多湿の文化の中で育ってきた被服だけあって、本当に機能的です。
“身八つ口”がいかに素晴らしいかを、寝巻きとして着用する浴衣で実感しています。

あらあら。
本当は第6話くらいまで書きたかった感想を第4話で止めたのに、浴衣の話で長くなってしまいました笑



最近、文章を書くことに、もっとちゃんと向き合いたいと感じています。
今回、【感想のお部屋】を書くときも、少し、姿勢を変えてみました。ほんの少しの変化ではありますが。
いつもは、画面の上で作品を読み返したり、自分の記憶をたどったりしながら【感想のお部屋】を書いていました。
けれど今回は、ディスプレイの中の文字ではなく、紙の上で読みたくなって。
作品を印刷し、心に残った言葉を拾いながら、少しずつ今回のお部屋を組み立てました。

同じ音楽でも、ピアノで作るのか、ギターで作るのかで変わるように

何か変化が起きるのか、と試行錯誤中です。





前回の終わりに「天の川のように美しく穏やかな光で満たされますように。」と書いてくださいました。

あまりに美しい表現で、この一文を思い出しながら、
アルタイルとベガの間に流れる、地上を照らすことのない、遠く静かな天の川の光に思いを馳せております。

では、また次の【感想のお部屋】でお会いいたしましょう。
次回こそは、どこまで進められるのか……^^;

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

1件のコメント

  • 金時まめ様

    いつも、一字一字を本当に大切に読み込んでくださり、そしてこれほどまでに贅沢で温かい「感想のお部屋」を届けていただき、本当にありがとうございます!
    画面の前で読ませていただきながら、あまりの嬉しさと、金時さんの見事な脳内会議の的中ぶりに、ここまで読み込んで頂けて驚き、感動してしまいました。
    今回の第3話から第4話にかけての展開について、金時まめ様にどうしてもお伝えしたい嬉しいポイントがたくさんございます。
    まずは「大正文学の“黴”の匂い」と、江戸川乱歩の少年探偵シリーズを重ね合わせていただいたこと、作者としてこれ以上ない最高の誉れです!
    今回は「隠れる、逃げるしか選択肢のない恐怖」を描くにあたり、ただ目に見える化け物の怖さだけでなく、耳を澄ます音、立ち込める埃や冷たい泥の「匂い」といった、五感を刺激する、少し湿り気のある不気味さを意識して執筆いたしました。
    金時さんが、小さい頃に図書室で怖がりながらもページをめくる手が止まらなかった、あの独特のワクワクする空気を思い出していただけたなら、これに勝る喜びはありません。
    「影の犬」という名を出さずに、「アスファルトを爪で引っ掻くような足音」だけで表現した部分をピンポイントで拾って絶賛していただけたのも、こだわった部分でしたので本当に光栄です。
    そして……何よりも驚かされたのは、金時まめ様の素晴らしい「脳内会議」です!
    「自動販売機」「網(箕)」という過去作のモチーフから、大空兄妹の歩んできた道に気づいていただいたばかりか、3つ目の「自転車」から即座に『GW怪奇譚』の冒頭を連想され、灯里と蓮の登場を完璧に予言されてしまうとは!
    正直に言いましょう。
    書いている時の私に、まったく計画性は無かったと。
    執筆中、勇輝と澪は知恵と工夫で怪異から逃げ、そうめんを届けるを考えていましたが、難しいと感じました。
    そこで思ったのが、『ブレイザーズ』にて二人が異世界で発揮した光の剣と魔法の杖の一時的な復活。
    ……でも、ちょっと違うな。
    などと考えて、私の作品は『妖神(マガカミ)』という地続きな世界観なので、クロスオーバーを兼ねて助っ人を思う。
    強いキャラは色々居ますが、小学生の勇輝と澪に近しい存在となると、中学生の灯里と蓮が最も適していると。(佐京光希を含めたキャラも中学生ですが、私の中のデフォルトは高校生を設定しているもので)
    意図しないものでしたが、金時さんの直感というか、これは最早予言レベルで察知し、かつ完璧に予測されたことに、作者として腰を抜かすほど驚きました。
    金時さんの読書眼、本当に凄まじいです!
    「聖なる灯火」でありながらも「怪異を惹きつける目印」でもある、あのタッパーを抱えて必死に水平を保ち、妹を守りながら走る勇輝の健気さを応援してくださり、本当にありがとうございます。
    やはり兄たるもの、妹を守る。というのは、必修の行為だと思いますので。
    そんな危機一髪の絶望の淵に、満を持して乱入した薙刀を手にした紅白の影。明言させないものでしたが、書きながら分かる人には分かるかな~。という書き方をしたつもりでしたが、気づいていただけて嬉しい。
    『GW怪異譚』から、姫宮灯里と清武蓮の登場です。
     画像で拝見しましたが、この度は印刷をし、その時に思われた気持ちをメモにされながら読んで頂いていたのですね。
     手書きメモの、文字の温かさと、キターの言葉に感情が溢れていて、何やら嬉しいです(^^)
    思えば、昔はこうして印刷して推敲したものですが、最近はPCの画面上で済ませてしまっています。アナログですが、こうして印刷して読むというのもいいですね。
    頼もしい先輩たちとの出会いが、勇輝たちをどう救い出し、祠へと導いていくのか。
    一歩進んで二歩下がる『感想のお部屋』、大歓迎でございます!
     むしろ、これほど一話一話に深く寄り添い、二人の道中を一緒に走るように楽しんでいただける読者様に出会えたことは、私にとってそれこそ天文学的な確率の幸運だと感じております。

     台風コロッケは、現代に突然現れた理由なき風習ですが、時をえると、新しい伝統になるのかな?
     などと思ったりします。
     台風に備えて、かぼちゃの煮つけを作っておく。
     検索すると、AI回答で栄養豊富で日持ちがしやすく、心も体も満たしてくれる素晴らしい常備菜。
     とのこと。
     これも先人の知恵なんですね。興味深いお話を聞かせて頂きました。
     ありがとうございます。

     『しばわんこの和のこころ』シリーズをご存知でしたか。
     あの優しい絵柄で、日本の伝統を教えてくれる作品で、非常に面白いですよね。
     私も全巻を持っている訳ではないのですが、またちょくちょく買ってみようかと思います。

     金時さんご家族は、着物に袖を通す習慣があったのですね。
     素敵です。
     現代に感化されてしまった私は、着物はおろか浴衣に袖を通すことなく育ちました(あったのは柔道くらい)が、着物文化は大切に思っています。
     身八つ口という言葉も初めて知る。
     ただの伝統的服装ではなく、その地域で生まれた服装というものは、見た目だけでなく機能的に作られているのですね。
     このお話を作品に活かしていきたいと思いました。

    また次の『感想のお部屋』で金時まめ様とお会いできるのを、心から楽しみにしております。
    なお、金時さんが執筆された7月28日は、私の誕生日だったりします。
    最高のプレゼントを、本当にありがとうございました!

    kou より
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