中学生の時。
仲良しのYちゃんのママに、
「まめちゃん、“じゃん”って言葉使うでしょ? 言葉遣いが心配よ」
と言われたことがある。
中学から親の仕事の関係で引越して、生まれた場所から1,000キロ離れた土地で育った。
引っ越してすぐ、周りの言葉の違いに戸惑った。
生まれてこのかた普通に話してきた言葉が《方言》だなんて思っていなかった。
時々、同級生にも揶揄われた。
歌えば うきうき いいじゃんか
踊れば うきうき そうじゃんか
地元の盆踊りの歌詞にも、“じゃん”“じゃん”。
出生地の言葉を使っているだけで、
「友だちの親から、我が子との付き合いを考える子」として見られるなんて、本当に驚いた。
Yちゃんのママは最初こそ注意したけれど、
すぐにそれがわたしの出生地の言葉だと理解してくれた。
その後もわたしはきっと、“じゃんじゃん”言っていたと思うけれど、もう注意はされなかった。
とても優しくしてくれた。
遊びに行くと、うちの文化にはなかった“にんじんケーキ”をよく焼いてもてなしてくれた。
Yちゃんとは、ピアノのお稽古も一緒に通い、高校まで一緒に通学した。
Yちゃんのママもずっと《まめちゃん》と呼んで可愛がってくれた。
成人してから何年か経って。
Yちゃんの家へ電話をかけたとき、ママが電話口に出て――
「まめさん?」と呼んだ。
いつも《まめちゃん》だったのに。
でもその言葉によそよそしさはなくて。
その呼び名が変わった瞬間、
わたしは“大人”として扱われていると気づいた。
中学生の頃からわたしを知っているのに、
対等に、大人として向き合ってくれている。
あぁ、なんてすごい人なのだろう。
わたしもこんな大人になりたい、と感じた。
にんじんケーキのレシピは教えてもらって、わたしも家で作るようになった。
今もその味は受け継がれていて――
ケーキを焼くたびに、中学時代のにぎやかな声と、Yちゃんママの笑顔がよみがえる。