「山」を含む小説

　弥二郎の夢は帝都で昆虫学者になることだった。もうすぐこの辺鄙な山あいの村である文日村を出て、2つ山を越えた先の町にある中学に通うのだ。しかし村を立つ直前になって、長雨が文日村を…

十歳を迎えた年、初めて外の世界を見た。 織り物商人として山を降りたラケは、商都の豊かさと賑わいにたちまち飲み込まれる。何もかもが目新しく、これまでの暮らしとは天と地ほどの差があっ…

私は恋をする—— 乙山椿先輩、私が恋をしたのは一輪の赤い椿の花でした。 「それって恋なんじゃないの？」 友人から発せられたその言葉は私に魔法をかけてしまう。 先輩は先輩で…

夜闇に紛れて現れるばけもの「傀（くぐつ）」は、ひとを傷つけ、いのちを奪う。傀からひとを守る「傀廻し」の類いである早瀬は、ゆえあってある城を目指し、旅をしながら傀と戦っていた。 …

ある村の過去の話です。 ※KAC2025のお題「妖精」に応えた掌編。

あらすじ 14歳の少年は原発性免疫不全症候群を抱え、花粉症に苦しむ日々を送っている。幼少期から入院生活が続き、外の世界に出ることを禁じられてきた彼にとって、春は苦痛と希望の季節だ…

ナツイやアヤと過ごした夏の山から数年。大学生になった陽太は学業やバイトに励んでいる。その一方で、アヤとは疎遠になっていた。そんな陽太の周辺で奇怪な現象が起こり始める。夜の公園で人…

人里から離れた山の中には妖精たちが住まう異界がある 人間と妖精の間に産まれたムクロは師を殺して、傷つけたものを確実に殺す魔剣『ゴラスの剣』を奪い、人間の女性と共に外の世界を目指…

主人公・橡《つるばみ》は山で育ち、雅客《がかく》の指導のもと毎日神楽を舞って過ごしていた。しかし、紫苑が現れた日から全てが変わり始め… ※昔書いた短編を分けたものですので、話がぶ…

KAC2025　第三回目お題：妖精 この作品は自作「アキバの探偵事務所には閑古鳥が鳴く」のサイドストーリーです。 【あらすじ】 アキバの外れ、雑居ビルの2階にとある探偵事務所…

舞台は滋賀県と京都府の間に聳える比良山系。 比良山系のとあるピークには山が好きだった叔父さんの分骨を埋めてその上に小石を積み上げて作ったケルンがある。夕貴（ゆうき）は毎年夏、そこ…

子が高校を卒業し，想い出すのは道遠く通った高校生活。部室の匂い。星空、化石と山と花。平成になる直前のお話し。

郊外にたたずむ全寮制の学校・十六夜学園。 ごくごく普通の学校だと思いきや、ここは人間社会で暮らす魔族の高校生のための学園だった。 唯一人間の私、透山明花は持ち前の存在感の薄さを武…

KAC2025　第二回目お題：あこがれ この作品は自作「アキバの探偵事務所には閑古鳥が鳴く」のサイドストーリーです。 【あらすじ】 アキバの外れ、雑居ビルの2階にとある探偵事…

KACお題「あこがれ」参加。 さくっと書けそうで、書けない話。今回は「家」に絞ってみました。

君は地の底で目を覚ました。 物言わぬ肉塊となった人が転がり、ゴミのように打ち捨てられた無数の躯が山を作っている。 垂れ下がる一筋の光の下、君は佇む。 ―――待つか、進むか。 …

通信制高校に通う私と体育で一緒にバドミントンをしてくれている箱山さん。 前期最後の授業で彼と会うのもこれが最後だと知った。 短い間でしか関係を築けなかったけど、好きになった。 そ…

山の中の祠には、由来の分からない神様が祀られていた。

小学五年生の有木鼓太郎は学校探偵を自称している。今回、彼に舞い込んだ依頼はクラスメート女子からの「転校していた垂水君が本当に私を好きだったかどうかを判断してほしい」というもの。誰…