「＃掌編」を含む小説

　佐和子は硝子屋の倅を見るたびに頬を染めていた。 　彼は普段寡黙で黙々仕事をしているから、佐和子が家業の手伝いで蕎麦を持っていっても気が付かない。すっかり硝子に夢中で、昼夜問わ…

ルナスは「まるで絵画から出てきたように美しい」と称される。 それには彼が愛している一枚の絵画が関係していた。

残業後の静かなオフィス。 私はiPhoneの“ユーザー辞書”だけを武器に、 圧し殺した感情を物語として書き出す。 沈黙の中、踏切の音だけが現実をつなぎ留める—— 低気圧の夜に、生…

短編集『おやすみ前の短いお話』に入れることを自重した、BLっぽい掌編を集めてみました。R描写はありません。長くても3,000字以下の掌編ばかりです。 他サイトでも公開しています。

短くても物語。2分で読める⎯⎯ミステリ

手を伸ばして助けてくれる大人は俺の周りにはいなかった。 俺はいつのまにか大人になっていた。 サンタクロースと泥棒の話。 かつて子供だったすべての大人たちへ……

負けたトロンボーン奏者、その名はアギューロ。 彼の心を折り、その後に救ったのは、クリューという一人のトロンボーン奏者だった。

　金がなかった。 　飯に行けば全部出して、飲みに行けばカードを切る。これで金がなくならないはずがない。しかし先輩社員というない袖を振ってなんぼの身。立場上、どうしても去勢を張ら…

こちらでもお読みいただけます。 →https://kakuyomu.jp/works/822139837047352213

嘘をつくと体が透明になる少年と、他人の嘘を見抜いてしまう少女。 誰にも言えない秘密を共有した放課後、二人は「見える」関係を選ぶ。

坂道の喫茶店で出会うのは、遠い国の花イペと、ふと胸をかすめる“祭りの残り香”。 音の記憶と静寂が交差する一瞬を描いた、小さな午後の物語。

魔法の痕跡が必ず残る世界。 魔法使用を完全に遮断するはずの魔封結界の内側で、 一人の高位魔術師が火術によって焼き殺された。 結界は正常。記録にも異常はない。 それでも空間には、…

すれ違いの温度── ふたりの間に残ったのは、ひと言の後悔でもなく、叶わなかった約束でもなく、 “わずかな温もり”だけだった。 改装されて姿を変えた駅で、 男はふと、かつて彼女を…

服役中の男と弁護士の、事務的な書簡のやり取り。 離婚調停のために始まった往復書簡は、 やがて十年前の失踪事件へと静かに触れていく。 法では裁けない罪を、 言葉だけで追い詰めていく…

遠い未来、あるいは昔。人は心ごと融解した── 人が溶ける病、「液化症」。 そのパンデミックを乗り越えた人類は、ある洞窟の奥に謎の液体を発見した。 世界連合はこれを「油田」と名付…

今まで投稿した作品の掌編短編集です。 現代の怪談奇談となります。 全体的に加筆修正をしております。物語の大筋は変わりません。 一話完結。物語の一部が繋がっています。長い作品…

お題を３つ、用意して。 ５分のインターバル、挟んだら。 ２０分、ひたすら書きましょう！ ――そんな三題噺の会は 毎月第３土曜21時～、Xスペースにて。

鈴の音で闇に呑まれたあやかしを浄化する役目を背負った『鈴乙女』の物語。

103号室の前には、いつも藤倉がいる。 他人の部屋の前に居座る彼とのやり取りが、今日も面倒くさい。

暗闇に行き先を失った少年は、ただ走り続けるしかなかった。 そこに灯ったひとつの光――友の提灯が、彼の世界に小さな道を照らし出す。