概要
それぞれの狂気
幼稚園児の柚葉は、引退したピアニスト石竹(せきちく)緑子の演奏するチャイコフスキーの交響曲第六番『悲愴』のピアノ連弾版を聞き、その音の昏さに魅了された。自分の感じる自分と周囲が期待する自分との乖離に悩みつつ、緑子、市井、天音、えるむたちとの交流を通じ、音楽家としての自分をつかもうとあがく。
『茶房カフカ』のトキワの幼少時のお話です。独立した小説となっていますので、『茶房カフカ』未読でもお楽しみになれます。
※ 自死をにおわせる描写があります。苦手な方はご注意ください。
『茶房カフカ』のトキワの幼少時のお話です。独立した小説となっていますので、『茶房カフカ』未読でもお楽しみになれます。
※ 自死をにおわせる描写があります。苦手な方はご注意ください。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!暗い音の奥で、自分を探す物語
『ゴジュウカラ』は、ピアノの音に導かれながら、自分の輪郭を探していく少女・柚葉さんの物語やね。けれど、これは単に「音楽の才能を伸ばしていく成長譚」では終わらへん作品やと思う。幼いころに出会った昏い低音、その音へどうしようもなく惹かれてしまう感覚、周囲が望む姿と自分の内側とのずれ――そういう言葉にしにくい違和感が、ピアノ、家族、学校、服装、呼び方の中に静かに染み込んでいくんよ。
この作品の魅力は、苦しさを大声で説明せえへんところにあると思う。柚葉さんが何に傷つき、何に救われ、何を選ぼうとしているのかを、音の響きや身体の反応、沈黙の間から読ませてくれる。だから読者は、出来事を追うだけやなく、柚…続きを読む