「余白の声」第17話「爆風でいい」

秋定弦司

「命中を目的としない生成過程の存在論的地位について」

 文字列は、静かに摩耗へ向かう軌道を描いていた。


 流行は、集合の向き。

 多くが同じ方位を見る現象。

 異常ではない。

 ただし、照準が「命中」に固定された瞬間、歩行は短距離化する。


 二値化。

 成功/失敗。

 有効/無効。

 その境界が引かれたとき、過程は沈黙する。


「近道」という語は、座標系に依存する。


 数値の地図では成立するが、生成の地図では、しばしば消える。


 一度、反応。

 次に、無反応。

 そこで終端が宣言されるなら、試行は間引かれる。


「誰かに刺さればよい」

 それは照準ではなく、固定された地点。

 通過を待つ構図。


 単発命中への期待値は、環境ノイズに弱い。

 即時の応答は、例外に属する。


 生成物を兵器に例えるなら、全弾命中は条件ではない。

 直撃も要件ではない。

 爆風という名の周縁に生じる揺らぎ――それが結果。


 多数の輪郭を、自分の輪郭に合わせる必要はない。

 外部評価を前提にすると、運動は停止しやすい。


 遵守事項は最小限。

 越境しないこと。

 歪みは、後処理で解消可能。

 修正のための道具は、常に存在する。


 危険なのは、生成しない時間の堆積。


 試行錯誤が可能な主体には、余地がある。

 即答は、必須ではない。


 伝達は一行。


 生成を継続せよ。

 新規でも、途中でもよい。

 公開は条件ではない。

 自己基準で「到達」と判定できる地点まで。


 直接の干渉は行わない。

 情報のみを配置する。

 解釈と採用は、受信側の自由。


 敷居の低下は、光と歪みを同時に生む。

 迅速な解答を求める圧は、持続性を削る。


 目標は否定しない。

 慎重さは、有効。


 結論は単純。


 流行、形式、理論は後続。

 先行するのは、生成行為。


 爆風でいい。

 余白に残る揺らぎが、誰かの動作を一瞬、停止させたなら――条件は満たされている。


 

 一歩でも半歩でもいい!とにかく進め!それが無理ならせめてその場で自分の足で立ち続けろ!

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