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書く前に迷った時の、役に立たない話――秋定亭弦司

※近況ノートなので、作品の話は出ません。与太話です。

 えー、どうも初めまして。「秋定亭弦司」でございます。与太話ですので肩の力を抜いてどうぞ。お代はあとで缶コーヒー一本。木戸賃というやつですね。

 最近は「小説を書く」ハードルがずいぶん下がりました。これはええことですわ。ただ、その分「創作論」も山ほど出回っていますなぁ。
 ……ですがね、全部真に受けていたら、まず迷子になりますわ。私も迷子になったクチですわ。ですんで他人様のことを偉そう言えたモンじゃありません。

 それに懲りましたんでね、私はこう言うてます。

「ソレはソレ、私は私」

 距離はそれくらいでよろしいんちゃいますか。

「書きたいけど、どうしたらいいかわからへん」

 答えは一つです。なんでもええから、とにかく書く。

 人に見せる文章である必要はありません。自分向けでええ。いや、「文章」なんて言うから身構えてしまうんです。メモ書きで十分ですわ。

 「今日、仕事行きたくない」

 これで完成。立派な文章です。

 ここまで読んで、まだ「どう書けばいいですか」と思っているなら、またの機会にぜひお越しくださいな。

 ……さて、残った方に続きをば……。

 創作の話を急ぐ必要はありません。まずは義務教育レベルの国語で十分。意味が通じる。それが基礎です。
 え?私ですか?ええ、見事にそこをすっ飛ばしました。中学三年間、読書感想文を一度も出さずに逃げ切りました。まあ、自慢ではありませんがね。

 さてさて、本屋に行ったら「ビジネス文書の書き方」を一冊買ってくださいな。小説の本ではありません。
 ですがね、「相手に伝わる文章」が、文学抜きで書いてあります。これは強い。

 私は工業高校卒でしてね、毎週「実習報告書」を書かされていましたわ。一番頭を抱えたのが「所感欄」、いわゆる「感想欄」ですな。空白だと先生に受理してもらえないんですよ。だから仕方なく書く。手を抜きつつ書く。
 そこで学んだのは一つだけ。

「思ったことを、とにかく書け」これだけですわ。

 最初から小説の体裁にこだわる必要はありません。腰が引ける人は、演劇の台本を書いてみてください。セリフだけでよろしいですから。
 横に「どういう気持ちで言わせたか」を一言書く。動作を書く。背景を書く。余白に「一言」で十分です。これが不思議なことに、気がついたら短い話になってるんですわ。

 形式論で止まるくらいなら、ひとまず書いてみなさいな。浮かんだものは、放っておくと逃げてしまいますんでね。え?メモの話はどこへ行った?あー忘れてました。

 AI?使えばよろしいんですよ。ただし鵜呑みは厳禁ですよ旦那様。

 最後に「才能」の話をば……。

 「才能がないから書けない」

 違いますな。“才能がない”と言えば、何も書かずに済むと思っているだけです。教えてる側もその一言で済ませられます。いやはや、便利な言葉ですなぁ。

 才能は誰も決められません。
 なら答えは一つ。書く。

 一人の天才より、百人の凡才。
 ああ、ご安心ください。私もその「凡才」の一人ですから。

 ……え?それならお前も書け!これは失礼いたしました。
 
それではおあとがよろしいようで。

 あ、缶コーヒー、忘れずにお願いしますよ。


【あとがき】

※本稿は、創作の手順や技術を解説する記事ではありません。
 書くことに迷い、立ち止まってしまった人が、次の一歩を考えるための与太話です。

 内容や語り口が合わないと感じた方は、無理に最後まで読む必要はありません。
 読む・読まないの判断も含めて、創作は個人の選択だと考えています。

 本稿に書かれている考え方を、そのまま受け取る必要はありません。
 参考にする部分があれば拾い、合わなければ手放して構いません。

 ただひとつ、ここに書かれていないことがあります。
 書くか、書かないかという判断だけは、他の誰かが代わりに下すことはできません。
 その選択をどう引き受けるかは、それぞれに委ねられています。

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