西洋哲学と東洋哲学という名の2本のバトン……受け取れ!
- ★★★ Excellent!!!
虚構と不誠実に浸かった現代人に、著者は西洋哲学と東洋哲学という名の2本のバトンを手向けています。現代人が誠実に生きようと願うなら、必須のバトンです。
まずは西洋哲学のバトン。読者がエンタメとして受け取れるよう、雰囲気を情熱的に脚色していますが、各時代の哲学史における争点をキッチリ踏まえて、その継承を物語にしています。そして、この物語は血みどろの闘争です。
(中世哲学がスコーンと抜けています。中世哲学は後世の土台にはなっていますが、バトンの継承を語る上で、省略するのは英断だと個人的には思います)
舞台が東洋に変わると、一話が長くなり、直接語るのではなく、抽象的な物語を通して書くスタイルになります。地獄のような現実の中を、蝶が舞い、雪が積もり、風が吹きます。西洋哲学は論理で語れるけれども、東洋哲学はそうじゃない、体験の哲学(論理で語ると膨大な経典群になり、矛盾のごときもはらむ)だから、物語という疑似体験を用いるのだと思います。
この作品の中の『僕』は、この作品を遺書として書いています。もしかしたら、著者さんは、自分の命の終わりを予感する何かがあるのかもしれません。それについて、私は言葉を持ちません。
私はただ、こう言いたいと思います。
「確かにこの作品を私は読んだ。素晴らしいバトンを受け取ったと思う。さあ、このレビューを読んでいるあなたも受け取りなさい。先人たちのように、みんなでこの2本のバトンを更に磨き上げよう。我らはこれらをどう受け取るべきか、大いに悩み迷うべき時代を生きている」
と。
この作品は、哲学まとめではなく、哲学へのいざないだと思います。正確性を追求するのは目的でなく、如何に興味を持ってもらうかに特化しています。
まぁちょっと、このバトン、受け取れよ。きっと『楽しい』ぞ。