哲学のバトン(完全版)

ゆう

プロローグ 2000年のバックスペース

21世紀初頭。


タイムラインは吐瀉物と絵文字と広告で詰まり、

「いいね」の数だけが心拍のように脈打つ世界。


インフルエンサーは今日も自撮りで蕩け、

信者たちはスクロールする指を血が出るまで動かし続る。


誰もが「自分は特別だ」と信じながら、

誰とも目が合わない画面に顔を埋めて、

平和に、楽しく、ぬるく腐っていた。



──アパートの一室。


書いても書いても、僕は何かを裏切っている気がしていた。


キーボードを叩く手が震える。


一文字打つたびに、血反吐が出る。

モニターに映る文字が、呪いの言葉に見えた。


エンターキーの数だけ、バックスペースが増える。


でも、書かずにはいられない。

書かなくてはいけない。


──これは、僕の遺書だ。

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