第2話 祝いの理由(わけ)

 アタイだって、あの金属の板切れが何となく凄いってことは分かるのよ。

 だけど、あの板切れはずっとは使えないんですって。


 アタイが「魔晶石で動かせないかしら?」って提案しても、「あの人」は静かに首を横に振るだけだったわ。

 どうやら「電気」って物を科学的に造らないといけないんですって。

 ただそれを作り出す方法は一杯あるって言ってたわ。

 何かをグルグル回したり……。と、とにかく色々あるって言ってたわ。


 ただ、勇者って大変みたいなの。

 一定期間で、何らかの成果を王国に示し続けなければならないって言っていたわ。

 魔晶石を積んだジェットスクーターは、この聖なる森を滑り出す。

 それでも「あの人」は一ヶ月に一度は、この精なる森に姿を現わして魔導ゴーレムを修理したり、アタイの乗り込むコックビットに金属の板を取り付けては色んなことを試していたわ。


 アタイが何で「電気」が生み出せるんだから、それで良いじゃないって言っても「あの人」はその「電気」を貯めて置いたり、適度な量を使わなければいけないみたいって言ってたわ。

 アタイだって、だんだん「あの人」が言う『科学』ってものが分かって来たから、こっそり使えそうな魔法陣を何枚も書いたりして次に「あの人」が訪れるのを心待ちにしてたの。


***


 何度目だったかしら? この聖なる森に「あの人」が訪れた時に転機が訪れたの。


「こ、これを君が一人で考え付いたのか?」


「そうよ。アタイだっていつまでも教わってばかりじゃないんですからねっ! 前に聞いたかみなりって『電気』そのものだって言ってたじゃない。だから魔法陣で再現してみたのよ」

 アタイは小っちゃな胸を張って、得意気に自慢する。


「正直、魔法陣で自然の気象状況をこんなに精緻に再現できるとは思ってなかったよ」

 「あの人」は驚きながらも、その顔は素敵な笑顔に満ち溢れていたわ。


「要は、二つの『風のエーテル元素』を閉じ込める魔法陣を作っちゃえば良いのよ! 片方は一杯に『風のエーテル元素』を詰め込む魔法陣。もう一つはスカスカな『風のエーテル元素』が集まるだけの基本的な魔法陣。この二つを近づければ大きな「電気」が生み出せるし、離して行けばやがて電気すら起きなくなるのよ。そうすれば適度な電気って簡単に生まれるでしょ?」


「凄いなぁ! これほど科学的に魔法を操るなんて、これで君も立派な『科学者』だよ」


「だから、アタイの名前は『プリシラ』だって言ったわよね!」


「ああ! きっとプリシラはこの世界で最高の『科学者』だよ」

 

 アタイはその日、『科学者』の称号を手に入れたわ。

 だからこの称号を讃えるお祝いで、盛大なパーティーを開いたの。

 大分成長してきた精霊たちも集めて、みんなでドンチャン騒ぎよ。

 

 だって……これでやっと『妖精の女王』って肩書きから解放された気がしたんですもの。



 ―― 完 ――

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祝いの意味 ~夢みる妖精とゴーレムのみる夢【オムニバス短編】~ そうじ職人 @souji-syokunin

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