祝いの意味 ~夢みる妖精とゴーレムのみる夢【オムニバス短編】~
そうじ職人
第1話 壊れてた魔導ゴーレム
「ろぼっと? それって何なのよ」
アタイは興味津々で前のめりになって、「あの人」の話に聞き耳を立てる。
今日は数十年ぶりにお母さま『ユグドラシルの大樹』が魔導ゴーレムが動いた記念の『祝い』である。
プリシラだって滅多に訪れることも無い来訪者に対しても、常におもてなしする用意は出来ている。
精霊たちが集めた特別の果実を、聖なる森の中の至る場所に隠して密かに熟成してある。
今回空けるのお酒だって、先達の妖精族の長老たちが遺した三百年もののお酒であるとラベルには書かれている。
ほろ酔い加減になった頃に、「あの人」が突然に語り始めたの。
魔導ゴーレムに、アタイが乗り込む必要が無いだなんて。
だからアタイも言い返したわ。
「あなたも魔導ゴーレムのことなんて何にも知らないじゃない。そもそも魔導ゴーレムは単純な行動しか出来ないのよ。例えばここからここまでの侵入者を排除しなさい! っとか言う簡単な命令しか出来ないわ。魔族との戦争に対して仕えるほど賢くは戦えないの。だから数十年前の退魔大戦の折には女王のアタイ自らが魔導ゴーレムに乗って、こう腕をぶん回して戦ったのよ」
アタイは身振り手振りを交えて、魔導ゴーレムで奮戦する勇姿を伝えて見せたの。
あの人はその姿を静かに見つめてくれてたけど、改めて金属の板を取り出して見せたわ。
「これはちっぽけな板切れに過ぎないけど、この世界では再現不能な英知が詰まってるんだ。バッテリー……エネルギー源が心許ないから今は短時間しか使えないけど、きっと君の言ってる属性のエーテル元素を正しく使えたら、きっとこの金属の板のエネルギー源にも変えることが出来るはずなんだ」
あの人はそんなことを言いながら、金属の板の上を人差し指を滑らして見せる。
「俺になんか話しかけてみてくれ」
あの人は突然、金属の板切れに向かって、そんなことを話し掛けだしたのよ。
アタイはてっきり「あの人」が酔っぱらっているんだと思ったわ。
すると板切れから突然声が響いてきたの。
「こんにちわ。どうしましたか? あなたの話したいことを教えて頂ければ、何でもお答えすることができます。何しろ私は優秀なAIですから」
きっと、あなたたちはそんな経験をしたことが無いから信じられないかも知れないんだけど、これって本当のことなんだからね!
今度は「あの人」がアタイに向けて、金属板切れに対して何か言って見てごらん? て言ってたからその通りにしてみたわ。
「えっと、アタイにも見えないんだけど、精霊さんが宿ってるのかしら?」
すると、金属の板切れからこんな返事が返ってきたの。
「初めまして。私は精霊さんでは有りませんが、とても興味深いお話ですね。是非詳しく教えて頂けませんか?」
***
※作者注:
本作中のスマホとの会話は日本語で行われています。
プリシラの会話には、実際には「あの人」が翻訳者となって会話を伝えています。
※連作前話:妖精族の元女王は科学者の卵になる ~夢みる妖精とゴーレムのみる夢【オムニバス短編】~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます