とある面接に使われるありふれた履歴書。
積み上げられるほど多くのそれらを、面接官きっと一枚一枚丁寧に見たりしない。
読者も同じように画面をスクロール、スクロール、スクロール――違和感に気づくのは何時になるのでしょうか。
ちょっとした違和感、大きな過ち、見過ごされる誤謬――それでも、スクロールせずにはいられない。流れ作業のように人が流れていく様は、まるでお笑い審査のようにも思える。何だ、こんな馬鹿なことを。
笑い飛ばして流した先に、見逃すべきでなかった違和感がある。にやっと笑った顔が、やがて引きつっていく。そんな気を抜いた瞬間に襲いかかるみたいな怖さが味わえる作品でした。
遂に、この作品が完結を迎えた。
正直なところ、今だに悪い夢の中を彷徨う
…そんな気持ちで今この瞬間に立ち会って
いる。作者はコメディ・ホラーという
或る意味、確立したジャンルに於ける
第一人者であると言えるのだが…。
この作品は、余りにも 異様 である。
それだけ、研ぎ澄まされた不条理と恐怖
更には作者の鋭い目で見た現代社会への
皮肉と風刺が至る所に織り込まれては
読む者に、えもいわれぬ
不安 を齎すのだ。
高齢者介護施設を運営する企業の求人。
よくある求人広告に入り込んだ
まさに 魔 ともいえる、違和感。
入れ替わり立ち替わり応募してくる
有象無象の中に、そして彼等を精査する
社員の中にも。
それ は、紛れている。
時に、出身校
前職、 自己PR、 特技。
一体この履歴書と面接の評価は
何なのだろうか。
呪いなどと生優しいものではなく。
それ は ─────。
この強烈なる個性に、もう導入からずっと魅了されていました。
本作は、「とある会社への入社面接の記録」という形でストーリーが進行します。
「エントリーシートとして書かれた略歴や志望動機」など。それに対する「面接担当者からの評価コメント」という形。
パッと見た感じは企業の中での業務の記録のように思えるのですが、よく見ると「みょ~な違和感」が……。
「面接に来ている人、これは本物の人間でした?」と思えるものとか、「この面接の人は強力なコネのある人だから手心を加えてね」と人事部から依頼があるのとか。
「おや?」と思うホラー感が滲んだり、「企業のあるある?」と思われる忖度展開でクスっと笑えるものとか。
そんな奇妙な採用記録を紐解く内に、どんどん「明らかに不穏な雰囲気」が漂い始めることに。
そうか。この会社は「そういうこと」をしてきた会社なのだな、と次第に全貌が見え、その因果の応報とも言える「何か」がどんどん迫って来ることに。
採用記録という形から垣間見える「異変」という形式がとにかく新しく、常に読者に新鮮な感動を与えてくれるところが秀逸です。
ホラーモキュメンタリーとしての形式が斬新で、いわゆる「近畿地方のある場所に」以降に流行ったルポルタージュ形式とは異なる、「次世代のホラーの在り方」を堪能できるのが特徴です。
同じ著者の「E中学校2004年6月の給食献立表」でも給食の献立表を見ること「怪異」を紐解くという特殊形式が採用されており、いわゆる「モキュメンタリー第二世代」としての個性を徹底的に確立していると言えます。
ホラーモキュメンタリーの新しい時代を切り開く、圧倒的な個性を持つ作品。是非ともその魅力を堪能していただきたいです。
本作はある会社の社員の選考から採用の過程を、履歴書や評価シートなどを見ながら追っていく、モキュメンタリーホラーだ。
この作品、会社も応募してくる人間もとにかく謎が多い。
この作品の紹介文を読んでるかぎりだと、わりと新しめの会社で、資本金や社員数を見てもあまり大きな会社ではない。
ケアヴェールという介護施設検索サイトへの掲載を提案する法人営業の仕事を募集しているらしい。
まあこれだけ見ると、特におかしなところはない。
しかし、この会社の求人に応募してくる者のなかに明らかに変な人が混じっているのだ。
そりゃあ中にはそういうやつもいるだろうとこの私の文章を読んで思うかもしれない。
たしかにそうなんだが、しかし、普通の会社ではなかなか会えないようなほどのおかしいやつらが面接を受けにくるのだ。
応募してきた人だけでなく、この会社自体、なにかやばいんじゃないかという気がしてくる。
また、作中に出てくる会社や学校の名前が奇妙なものが多く、こんなところが本当に存在しているのかと思ってしまう。
もしかしたらこれは普通の世界の出来事ではないのかもしれない。
とにかく気になる謎が多く、先が早く読みたいと思ってしまいます。おすすめです。