痛いほどリアルで、だからこそ胸に残る作品

この物語の一番の強さは、
主人公・信一の感情の揺れが、誇張なしにそのまま描かれていることだと思います。

アイドルオタクであることへの自嘲、
社会人としての停滞感、
「別に不幸じゃないけど、幸せとも言えない」という空気。

どれも大きな事件ではないのに、読んでいる側は
「ああ、分かる」「これ、俺のことかもしれない」
と何度も頷かされます。

特に冒頭の
別にいいだろ。好きなものがたまたまアイドルグループi.sだったってだけだ。

この一文で、主人公の防御と本音が同時に伝わってきて、
読者との距離が一気に縮まります。

そんなわけで大変面白かったです。