王道かつ安心感のある異世界ヒーラー作品

王道かつ安心感のある異世界ヒーラー作品だと感じました。

セツナは「チート能力を持っている」ものの、
驕らない
見返りを求めない
感謝を忘れない

という姿勢が最初から最後までぶれていません。
特に治療をしても料金を取らない場面や、町の人たちへの感謝を何度も言葉にする描写は、読んでいてとても温かい気持ちになります。

異世界転生ものでは「力を得て調子に乗る主人公」も多い中で、
セツナは「力を得ても人としての優しさを失わない」タイプなので、
読者が自然と応援したくなる主人公像になっています。

町大工のおっちゃん、ギルドマスターのダグラス、料理人見習いのショルツ――
登場人物たちが皆「善良で血の通った存在」として描かれており、
この街でセツナが生きている実感がしっかり伝わってきます。

派手な戦闘がなくても、「ここで暮らしたい」と思える世界観が構築されています。

回復魔法フルセットという強力な能力ですが、
それが自己顕示欲や戦闘のためではなく、人助けに特化している点が作品のテーマと非常によく合っています。

「回復魔法の才能は優しい心に比例する」というセリフも、
主人公の生き方を象徴する良いフレーズでした。

能力の強さよりも、
なぜそれを使うのか
がしっかり描かれているため、チート感が嫌味になっていません。

ラストで提示される
「王都の公爵令嬢の不治の病」という依頼は、
これまでの穏やかな日常から一段階スケールが上がる良いフックになっています。

王都という新しい舞台
これまで治せなかった病
貴族社会との関わり

など、今後の展開への期待が自然に高まる締め方でした。

2話までの感想