孤独な少女と不器用な男が綴る、心に染み入る物語

全5話の短編です。

多感な小学校五年生の少女・凛と、不器用ながらも優しい男・健のやり取りが心に染み渡ります。
物語は二日後に引っ越しを控えた一日を回想と共に描き出しています。

凛はうらぶれたアパートの一室で母と二人暮らし、いつも独りぼっちでした。
そんな凛にとって、階下に住む健だけが心の拠り所で、実はこの二人、心に大きな傷を負っているのです。

故あって一人暮らしの健は世間では●●と言われています(伏字部分は是非本文で)が、凛はそうでないことを知っています。
本当の健の姿を知っているからこそ、凛は健に、健の優しさに惹かれていったのかもしれません。

第3話で凛が健に告げる言葉があります。凛の最大限の思いにぐっと来ました。
結末は想像の中にしかありませんが、いろいろな解釈ができる余地を残しています。

凛は引っ越しに際して、二つのものを手放します。
それは未来に向けて新たな人生を歩み出す一歩であり、また過去に戻るための一歩でもあり、読み手の心の中に深く染み入ってきます。

余韻を残す素晴らしい作品です。ある程度の読む力を求められますが、一読する価値大です。是非ともこの機会に触れてみてください。

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