干支会議が神ツッコミで暴走、卵とねーが笑いと恐怖を連れてくる痛快な一作
- ★★★ Excellent!!!
『ねーうしとららん』は、誰もが知る十二支の昔話を、神々の会議という「決め方」の場面から組み替えて見せる。担当神が得意げに「ねー、うし、とら、らん」と読み上げた瞬間、会議の空気が一段冷える。この違和感を起点に、神鏡の映像で「らん」の正体を追っていく流れが明快で、読者は笑いながら不安へ引き込まれる。
特に印象に残ったのは、夜の映像で卵の表面に大きな眼が現れ、殻が横に割れて長い舌がネズミを絡め取り、殻の中へ連れ去っていく場面だ。可愛い干支の世界に、捕食の生々しさを一瞬だけ混ぜることで、神々の「これはマスコットにしてよいのか」という議論が急に切実になる。そこへ「信仰ポイント」など俗っぽい仕組みまで淡々と提示され、神ツッコミが入って、笑いが戻る。この緩急が作品の持ち味だと思う。後編でも「ねー」の正体で同じ型の驚きを重ね、最後に「辰」の見落としまで置いて締める手際がいい。短いのに、設定とオチがきれいに残る。