ねーうしとららん
志草ねな
前編 らん
昔々、神様が動物たちを集めて言いました。
「一年の代表となる、十二匹の動物を決めよう。明日の朝、ここに早くたどり着いた十二匹を『
ありとあらゆる動物が、神様のもとへと走ってきました。
そして、一着から十二着までの動物が十二支となったのです。
その翌日。神様たちの会議が行われました。正式に十二支を定めるためです。
「十二支担当神、毎年のマスコットキャラクターになる『十二支』は決まった?」
マスコットを守る神が尋ねました。
「はい。ねー、うし、とら、らん、たつ、み、うま、ひつじ、さる、とり、いぬ、い、です」
神様たちの間に、微妙な空気が流れました。何か、違和感があるのです。
「ちょっと十二支担当神、もう一回言ってくれない?」
「わかりました。ねー、うし、とら、らん、たつ、み、うま、ひつじ、さる、とり、いぬ、い、です」
やはり、聞き間違いではありません。「らん」というよくわからないものが混じっています。
「その『らん』というのは、聞いたことがないがどんな動物なんじゃ」
皆を代表して、会議を
「このようなものです」
十二支担当神は、
そこには、象と同じくらいの、あまりにも巨大な卵が映っていました。
神様たちの間に、再び微妙な空気が流れました。
「これは……動物なのか?
会議を司る神が首を傾げます。
「あっはっは、こんなに大きな
十二支担当神が笑いますが、他の神様は誰も笑いません。笑えないのです。
「この『
マスコットを守る神が言うので、十二支担当神は鏡を操作しました。
「昼間はあまり動かない動物ですので、倍速にしますね」
鏡には、通常の倍の速さで飛んでいく木の葉や、どんどん角度を変えていく影が映りますが、
とうとう、夜になってしまいました。鏡は真っ暗です。
「画面を明るくしますね」
十二支担当神が明るさを調節したので、夜でも
すると、ネズミが
まさに、その瞬間でした。
「わぁ、見ましたか皆さん! とても珍しい捕食の様子ですよ!」
喜んでいるのは十二支担当神だけです。他の神様たちは皆、石のように固まっておりました。
「ダメダメ! こんな化け物、一年を代表するマスコットとして認められないわよ!」
マスコットを守る神が叫びました。
「何をおっしゃるのですか、レースの上位十二匹を十二支にするというルールを定めておきながら、今さら無かったことにはできません」
十二支担当神が反対します。その言葉を聞いて、会議を司る神が疑問を持ちました。
「のう、確かこの『
「そうよ! こいつ足だってないじゃない。そもそも走れないのにどうやってゴールまで来たっていうのよ!」
「言われてみれば、私も走るところは見ておりません。昨日の様子を鏡で見てみましょう」
鏡にまたあの
しかし突如、あのおぞましい眼がカッと見開かれました。
「時は来た」とでも言わんばかりに。
その直後、
途中、時速百キロで走るというチーターを弾き飛ばしました。
「なんと! まさか転がるとは思いませんでした。神アーカイブにまた貴重な映像が増えましたね」
喜んでいるのは、やはり十二支担当神だけです。
「喜んでいる場合かー!」
他の神様たちからの神ツッコミが入りました。大して上手くなくても、神がツッコむので神ツッコミです。
「十二支担当神や、わしらが十二支を定めようというのは、遊びではない。神々によって認められたその年の代表の動物、それが人間たちによって祀られる。人間にとっては毎年違った動物の品物を作って売れるから儲かるし、わしらもその動物が祀られた分の『信仰ポイント』の三割を受け取れるシステム。神にとっても人にとっても喜ばしい、大事なことなのじゃ」
会議を司る神が淡々と言いました。
「神が俗世間の良くないものに染まっている気がするなぁ」
十二支担当神のつぶやきは無視されました。
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