この陰湿さ、そして排他的な雰囲気、実に正統派の因習ホラー

じっとりと湿り気を帯びた重苦しい空気を感じる本作。
ホラーというものは空気感が重要ですが、こと因習村に関しては、その閉鎖的な環境を際立たせるための演出面でも空気感が重要になります。
よりじめじめと、より不愉快に、よりむさ苦しく。
そんな不快感を感じるような空気が、因習村全体に漂っていなければなりません。
その空気感が実に素晴らしい。

そして、その異質な空気を伴ったまま、奇妙な風習の民間伝承が形作られる。
複雑怪奇である必要はありません。
むしろ、単純明快である程ひりついたものを感じます。
これがまた、セオリー通りで上手いのです。

そして、ホラーにつきものの、読了後に感じる後味の悪さ、読み手にぶん投げるぶつ切り感。
そのゾクゾクするような余韻が、存在しないはずの良くないものを幻視させてしまって実に良いのです。
因習ホラーの短編として、実に完成度の高い作品です。

是非とも本作を読んでいただき、正統派の因習ホラーの不気味さを感じ取ってみてください。

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