その家族には伝統がある

マーク家には当主とその妻が伝記を残す伝統がある――代々同じ工房で作られた羊皮紙を使うというこだわりぶりから、この家にとってはとても大事な伝統なのでしょう。
だからこそこの自伝はその人が生きた証であり、それを作り上げることはマーク家の一員になるための試練なのだという娘の言葉には重みがあります。

しかし主人公はその本当の意味を知りませんでした。

マーク家の自伝はまさしくその人そのもの。伝統を守る家族と、その家族の娘に恋をした主人公の行く末に思いを馳せられる、しっとりとした狂気漂うお話です。