透明な膜越しに見守るのは
- ★★★ Excellent!!!
思い出すのは水族館。真っ暗と言えるくらいに暗い館内、幻想的な紫の淡い光の中にぷかぷかと浮かぶ海月。
それとよく似た〝わたし〟の世界に、時折彼女の涙が降ってくる――その表現が凄く素敵だなと思いました。〝彼女〟と〝わたし〟の世界の間には透明な膜があるけれども、涙が降ってくる時だけは繋がるような印象を受けます。
この膜は水槽のガラスであるだけでなく、〝彼女〟と〝わたし〟を明確に分けていたものなのでしょう。もし仮に水槽が不要な生き物だったとしても、やはりそこには膜があったはずです。
様々な生物としての生を経験して人の言葉を理解する海月と、それを知らずに接する人間の〝彼女〟。〝わたし〟がどうしていつも辛そうにする〝彼女〟を慰めてあげたいと思ったのか。どうして〝彼女〟の傍にいたのか。
優しく切ない物語、是非ご確認ください。