彼女が飼っているものは、犬や猫、況してや鳥といったものではなく、
なんとクラゲでした。
彼女は毎晩、泣きながらクラゲに話しかけました。
そして彼女の職業は『水商売』
なんの因果か、『水』に関係する組み合わせにございました。
店のトップである彼女は、トップを独走するものとしての人生の虚しさ、
そして、本当の幸せや温もりがわからず、眠れぬ夜を過ごしていたそうなのです。
シャーリーンという歌手の「愛はかげろうのように」を、なんとなく思い出しました。
彼女の言葉を聞きながらも、クラゲには何も直ぐことができず、ただただ手足を動かすのみ。
もし私に腕があったなら。と思う日々でした。
そして、その日は訪れます。
彼女の妹が、訪ねてきたのです。
母の悲報を伝えにでした……。
クラゲは、海の宙に浮かぶ雲。
なのに海の月と書きます。
それが月に見えるのは、
泣いている時に見上げた月が、ぼやっと滲んで見えるそれとよく似ているからなのでしょうか……。
ご一読を。