学生時代
神夜紗希
学生時代
私の部屋にはコンポがあった。
J-POPが好きで、色んなアーティストの歌を毎日流していた。
宿題をしている時も、漫画を読んでいる時も、
眠る直前まで、音楽はそこにあった。
ただ、寝る時は夜中から朝まで流し続ける事を親に止められていた。
なので、コンポの設定をリピートにはせず、
自分で作った曲リストが入ったMD一枚分の再生が終われば、
部屋の中には静寂が訪れる。
——はずだった。
深夜に目が覚めた。
ベッドに横たわったまま、ふと壁にかけてある
ドラえもんの壁掛け時計に目をやると、夜中の二時だった。
普通なら、このまま目を閉じて夢の続きを見る。
だが、それが出来なかった。
音楽が、聞こえるからだ。
十時前に就寝したため、
MDの曲リストはもう終わっているはずだった。
リピート再生の設定も、アラーム設定もしていない。
なのに、私の耳には音楽が届いてくる。
なぜ?
そう考えているうちに、自然と睡魔に襲われ、
気付くと朝になっていた。
そんな日が、何日か続いた。
たまに金縛りに遭うこともあったが、
いつものように目を閉じて、やり過ごす。
こんな目に遭うのは私だけなのだろうか。
中学生だった当時は、分からなかった。
ある日、同じマンションに住む幼馴染に話してみた。
幼少期から一緒に育ってきた私達は、
なんでも話し合える親友だった。
小学生の頃はお泊まり会をよくしていたが、
中学生になってからはしていなかった。
ホラー好き、という共通の趣味があったせいか、
話すとすぐに食い付いてきた。
お泊まり会をして、
その部屋で幼馴染が寝てみる事になった。
週末、早速幼馴染が泊まりに来たので、
その日は私もコンポが見えやすい床で寝ようと、
布団を二つ並べた。
私は幼馴染が隣にいる安心感から、
すぐに寝入ってしまい、朝まで起きる事はなかった。
しかし、幼馴染は違ったようだ。
私は、スッキリした気持ちで朝を迎えると、
隣にいる幼馴染に「おはよう!」と声を掛けた。
幼馴染はゆっくりとこっちを見た。
少し暗く、眠そうな顔をしている。
いつもと逆だった。
朝が弱くて不機嫌なのは私で、
いつも朝から笑顔なのは幼馴染だった。
幼馴染は布団から起き上がると、
暗い顔の理由を教えてくれた。
『コンポから、音したよ』
『何か分かんないけど、怖いって感じた……』
『何回名前呼んでも、起きてくれなかった』
『気付いたら寝てたけど、嫌な夢見た気がする』
名前を呼ばれた記憶などなかった。
むしろ、朝まで起きなかったのは久しぶりだった。
幼馴染が居てくれたから……?
幼馴染が居たから……?
やはりこの部屋には、何かがあるのかもしれない。
それから数日が経った。
幼馴染とは同じ階に住んでいるため、
毎日エレベーター前で待ち合わせて、一緒に登校していた。
その日、幼馴染が先にエレベーター前で待っていた。
私は待ち合わせ時間ギリギリで、
慌てて靴を履き、玄関ドアを開けた。
その時、見えてしまった。
エレベーター前に立つ幼馴染。
その横、エレベーターのサイドには柵がある。
柵の向こうから、
幼馴染に向かって、白い手が伸びていた。
ここは七階だ。
柵の向こうから、手を伸ばせる人間はいない。
ぞっとして、私は思わず名前を呼び、走り寄った。
白い手は、サァァッと
白いモヤのようになって消えた。
そこには、
早朝の爽やかな風と、
驚いた顔をしている幼馴染だけが残った。
それ以来、白い手は見えない。
幼馴染が泊まりに来る事もない。
コンポからは、相変わらず夜中に音楽が鳴ることはあったが、気のせいと思う事にした。
金縛りにさえ遭わなければいい、と。
もう、私の感覚がおかしいのかもしれない。
——
ある日の休日に、幼馴染や同じ部活仲間と公園で遊んでいると、1人の子が言い出した。
「公衆電話にね、87530(はなこさん)って打って電話を掛けるとね、折り返し掛かってくるんだって。」
よくある子供の噂話だな、と思った。
そんな事あり得ない。
公衆電話に折り返しなんて、ある訳がない。
「じゃぁ、やってみる?」
私は10円玉を取り出した。
公衆電話ボックスに入れるだけの友達と詰め寄りながら、お金を投入して、ゆっくりと番号を押した。
8…
7…
5…
3…
0…
しーん…
受話器からは何も聞こえなかった。
私は少しホッとして受話器を戻す。
ガチャンッ
しーん…
「ほら、やっぱり何も起きな…」
そう言い掛けた瞬間…
プルルルルップルルルルッ
公衆電話からけたたましい音が鳴り響いた。
全員が悲鳴をあげて、
一斉に公衆電話から離れて公園から走って逃げた。
不思議な体験は部屋だけじゃない。
世の中には、たくさんの不思議があるのだ。
学生時代のこの体験は、今でも忘れることはない。
そして今でも、謎のままなのだ。
学生時代 神夜紗希 @kami_night
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