台所で起きる、忘れられない朝の一幕
- ★ Good!
とても身近で、だからこそ笑ってしまう話でした。
半熟卵を前にしたヨメの逡巡と、理屈では納得しきれないまま見守る語り手。その距離感が、夫婦の朝らしくて微笑ましいです。
大丈夫だと思う気持ちと、なんとなく嫌な予感。その両方を抱えたまま時間が進み、卵が小刻みに震え始めたあたりから、読んでいるこちらも身構えてしまいました。
そして訪れる爆発。わかっているのに笑ってしまうのは、きっと誰もが似たような失敗やヒヤリとした経験を持っているからだと思います。
犬が卵を食べていたり、鍋の蓋で必死にガードしたりする描写が、この出来事をただの笑い話ではなく、ちゃんとした生活の記憶にしています。
大事件でもないのに、なぜかずっと覚えていそうな朝。
そんな一日を切り取った、あたたかくて人間味のある一話でした。