笑いと背筋の寒さが、同時に来るトンネル

短いのに、とても印象に残る怪談でした。
真夜中の軽自動車、廃れたドライブイン、生活道路のトンネル。状況の積み重ねが自然で、無理に怖がらせに来ないところが逆に不穏です。

会話は軽く、どこか冗談めいているのに、ライターが震えている描写や「ここは生活道路だ」という一言が、現実の重さを静かに差し込んできます。
ホラーにありがちな誇張がなく、若さゆえの暇つぶしと、取り返しのつかなさが同時に漂っているのが良いです。

そして最後の一行。
一気に視点が裏返り、笑っていいのか、ゾッとすべきなのか分からなくなる余韻が残りました。
読み終えたあと、ふと後部座席を確認したくなる、そんなタイプの怪談です。

軽さと怖さのバランスが絶妙で、短編ホラーとしてとても完成度が高い一作でした。