二転三転する鮮やかなプロットそして盗みのプロが恋という最も無警戒な隙を

二転三転する鮮やかなプロット、そして「盗みのプロ」が「恋」という最も無警戒な隙を突かれるアイロニー。

「騙しのプロ」が騙される、最高に皮肉なカタルシス、
「怪盗としての卓越した技術」が、そのまま「恋の盲目さ」を際立たせる装置になっている。

主人公・ジロウは警察100人の包囲網を嘲笑うほどの天才。しかし、そんな彼が「スリの被害に遭っている美少女」という、あまりにもベタで守りたくなるシチュエーションに遭遇した瞬間、その観察眼は「警戒」ではなく「羨望」へと変換されてしまいます。

「盗むのは得意だが、心を盗まれるのには無防備」というジロウのキャラクター造形が、ラストの鮮やかな裏切りに見事に繋がっています。