ずっとあなたのそばにいたから。

触れられるか、触れられないかのギリギリの感性。

まさに『膜』とも評せるであろうその質感。それは、きっと作者様の唯一無二の持ち味。
本作でも、存分に活かされています。

皮肉なものとでもいいましょうか。
満たされないから追う。追えば満たされる。満たされれば幸福が待っている。
けれどなかなか、そうはならない。孤独を疑似餌で賄えないのは、
哀しさという感情を背負った、人間のさがなのでしょうか。

半透明の膜を隔てて、それでも作者様は、手を伸ばしたのではないでしょうか。

物語に乗せて。
やわらかな願いの唄が、どうかあなたにも、届きますようにと。