編集の妙味、作家の信念
- ★★★ Excellent!!!
レビューアーとして打ち明けます。本作を読み始めたとき、星やレビューをつけてよいのか迷いました。この短編集は大半のエピソードが既出です。一つの流れにまとめただけで新作と名乗ることは道義に反してはいないか。
印象は半分ほど読み進めると変わってきます。本レビューをお読みのカクヨムユーザーにとってもそうでしょう。
裏側には、細くとも切れず、長く、力強い、隠れたストーリーが存在します。既出作品を繋げたに過ぎなかったはずが、一つの大きな物語として見えてきます。最初から、大きな物語を徐々に明かしていったかのように……
それを可能にした要因は二つあります。編集の妙味と、作家の信念です。
技量を持つ人は自作の立ち位置も偏り少なく把握していますから、効果的な繋げ方を設計できます。後付けであっても最初から存在したかのように作れます。
もう一つは、やはり最初から筋が存在したということ。それぞれの作家には信念があります。販売に特化した人はさておき…… 信念が音楽における通奏低音にも似て、いずれの作品にも貫かれていました。ですから後から纏めることも可能だったのです。
犯罪であっても手口の鮮やかさに、一本取られたような気分です。参りましたからレビューを記しました。