再会の日が終わりに近づくなかで

生前の記憶をもとに死者の「いま」を映すAIと、残された者との心の交差を描くSFラブストーリーです。

年に一度の再会、そしてAIのアップデートの日。
リナの眼前には何度かのアップデートを経てすっかり生前と違わぬ振る舞いをするようになったAIのダイゴがいました。

このまま毎年アップデートを重ねていけば、永遠にダイゴは生き続ける。
ところがダイゴの口からはアップデートを拒否したい思いとその理由が語られます。

究極に進化したAIは人間性——自己肯定を獲得し、それと不可分の自己否定をも獲得してしまうのかもしれません。

しかしAIダイゴは、その矛盾こそが自分に残された最後の人間性だと感じたのかもしれません。
そして彼は、リナとの美しい思い出を抱えて消えることを選択します。アップデートによって矛盾が整合されてしまう前に。

リナの思い、ダイゴの思い、それぞれが正しく、その出所は互いを思う心というのがわかるだけに、読者は胸が苦しくなります。

再会の日が終わりに近づくなか、彼らはどのような答えを選んだのでしょうか。

結末は本作にてご覧ください。
お薦めです。ぜひ。

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