国が恋愛を管理する世界――効率という名のディストピア

少子化対策のため、政府がマッチングアプリを国家管理。スーパーコンピュータ〈天照〉が科学的に「運命の相手」を診断する近未来日本――
警視庁から出向した主人公リコの相棒は、国に目をつけられた優秀な高校生。「才能を社会に還元する」名目で働かされる彼ら学生特別公務員は、普通の人生を奪われ、首輪をつけられた存在だった。
この設定が、恐ろしくリアル。
「効率的だから正しい」「若くて優秀なら働かせるべき」「国が管理すれば安全」
――すべて論理的に聞こえるのに、どこか歪んでいる。
表向きは明るい婚活支援。でも所長の笑顔が時折見せる「別の顔」、主人公を監視する視線、システムの裏に潜む不穏な空気。リコは「左遷」なのか「潜入捜査」なのか――
読むほどに謎が深まる。
お仕事ものの体裁を取りながら、「管理される恋愛」という設定で現代社会を鋭く風刺する近未来ディストピア。この違和感、クセになります。

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