優しくて、怖い。人外たちの溺愛が心地よすぎる和風ホラー

左目を傷めた主人公が越してきた山奥の屋敷。そこには金魚、インコ、猫が化けた三人の妖が棲んでいた――
金魚の紅玉は愛らしく甘えてくる少女。インコの翡翠は完璧な家事をこなす青年。白猫の真珠は口は悪いが守ってくれる少年。彼らとの穏やかな日常は、まるで夢のように心地よい。
でも、ちょっと待って。
この「優しさ」、ちょっと重くない?
紅玉の「誰にも邪魔されたくない」、翡翠の「主は僕のもの」、真珠の「他の奴に懐くな」――
三人の過保護すぎる執着が、じわじわと不穏さを増していく。
一話10分の日記形式で描かれる、怪異退治と日常生活。「こもり声」を封じる儀式、客間に棲む何か、夜の電話の正体――
和風ホラーの美しさと、人外たちの溺愛が絶妙に混ざり合う。
そして最大の謎は、なぜ三人は主人公のことを「知っている」のか。文机の意匠、主人公の過去、前の主との関係――
読み進めるほど、この屋敷に隠された秘密が気になって仕方ない。
癒されたいけど、ちょっとゾクッとしたい人に最適。この絶妙なバランス、クセになります。

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