少子化に直面した社会が、個人の(恋愛)にまで介入するというディストピア
- ★★★ Excellent!!!
少子化対策という現実的な社会問題を起点としながら、その解決策として国家が「マッチングアプリ」の管理・推進に乗り出すという、非常に斬新でユーモラスかつディストピア的な設定から始まります。この設定こそが物語の最大の魅力であり、読者を一気に引き込むフックとなっています。
理子のキャラクターは、警察官としての正義感とエリート意識を持ちながらも、「マッチングアプリ」という、彼女が「嫌悪」すら覚えるツールを扱う部署への異動に「左遷」というネガティブな感情を抱いています。
「すべて効率的な方が『正しい』から、私は今ここにいる。」
彼女がこの特異な職場でどのような倫理的・心理的葛藤を抱えていくのか、深く共感を誘います。警察権の行使という役割を持ちながらも、本質的には「国民の恋愛を管理する」という職務に戸惑う姿が丁寧に描かれています。
物語は、単なるコメディや職場劇に留まらず、現代社会における重要なテーマに触れています。
「国家が国民の恋愛を管理する」という構図は、極度の危機(少子化による国力減退)に直面した社会が、個人の最もプライベートな領域(恋愛)にまで介入するという、ディストピア的な側面を鋭く描いています。
マッチングアプリが「最大の希望」でありながら「犯罪の温床」という諸刃の剣として描かれている点は、現代のネット上のコミュニケーションが持つ両面性を象徴しています。
ユニークな設定と、主人公の理子をはじめとする個性的なキャラクターの対比を通じて、国家」「効率」「恋愛」「自由」といった重いテーマを軽妙かつシニカルに描いた、非常に魅力的な導入部です。理子が「マッチング警察」として、この矛盾に満ちた組織で、自身の正義と向き合っていく展開に胸が熱くなります。