重厚で繊細な宮廷ファンタジー

宮廷ものとしての土台の作り方がとても丁寧で、作者さんの世界構築力がよく伝わってくる作品だと思いました。

キャラクターの立場の違いを、説明に寄りすぎず自然な関係性の中で見せているのが上手いです。
特にユーリアの振る舞いは年齢以上の聡明さと危うさが同居していて、「この子は将来どうなるんだろう」と先を読ませる力がありますね。

事件自体は派手ではないのに、愛妾制度や宗教観、宮廷の空気感がじわじわ効いてきて、静かな緊張感が続く構成も印象的でした。
作者さんが「権力の近くにいる子どもたち」をどう描きたいのかがはっきりしていて、安心して読み進められる導入だと思います。

重厚だけど読みづらくならない、そのバランス感覚が光る一編でした。

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