逃げる男と、追う国家権力と……人生?

それは、暑い夏の夜の出来事だった。
警察署の接見室で、ひとりの弁護士が出会ったのは──
「働くのが嫌でムショに行きたかった」と語る、妙にあっけらかんとした犯罪者。

居酒屋での無銭飲食、警官の登場、そして始まるまさかの逃走劇。
ところがこの男、逃げる途中で「とんでもないアクシデント」に見舞われるのだった。
滑稽で、情けなくて、どこか憎めない。

だが……笑いの奥に、確かに見える「人間の尊厳」。
その夜の会話を、弁護士は十年経っても忘れられない。
人生の底の底で、人は何を思い、どう生き直すのか。

読者の感情をじわじわと攫う、哀しみとユーモアが交錯する珠玉の短編。

その他のおすすめレビュー

法王院 優希さんの他のおすすめレビュー1,101