金輪際海に近づいてはいけない

 病床に臥せる主人公の元に一人の行商人が訪ねてきます。
 行商人の名は「しきみ」。
 
 勝手に家に上がり込むと、「薬を売りに来た」と言い出し、天秤棒の両端に下げた行李から人魚の片腕を取り出します。
 その腕を置くと、彼はさっさとその場を立ち去ろうとするのですが、最後に奇妙な忠告をするのです。
 
 その肉を食ったなら、金輪際海には近づくな、と。

 余命が残り少ないことを知っている主人公は、その人魚の腕を食べてしまいます。

 翌日には病状が回復し、仕事にも就き、やがて結婚もするのですが――。

 淡々とした語り口と静かに進む物語が、じわじわと恐怖の中に読者を引き込んでいきます。

 ぜひ、ご一読を。

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