「攫われても折れない花嫁と、笑う鬼の山」
- ★★★ Excellent!!!
嫁ぎ先へ向かう道中、
少女は 人喰い鬼の棲む山 でさらわれる。
相手は恐ろしい怪物――かと思いきや、
現れたのは角を持つ、どこか少年めいた鬼。
銃を構え、頭突きをかまし、
怯むことなく啖呵を切る十五歳の花嫁。
彼女が嫁に行く理由は、
愛でも夢でもなく、兄を救うための覚悟だった。
鬼に攫われても泣かず、
理不尽な運命にも背を向けない。
軽快な会話の裏に、
貧しさ、差別、犠牲を引き受ける強さが滲む。
これは「可哀想な花嫁」の物語ではない。
腹を括った娘と、人外の存在が出会う、
濃厚で骨太な和風異類婚姻譚の始まり。