都合のいい関係から始まる私たちの生活

朝……目を覚ました場所は、どう見てもラブホのベッドの上だった。
隣ではスーツ姿のまま、子どものように安心しきった顔で眠る若い女性がいる。

彼女のことは知っている。
私の職場の居酒屋にここ数年ほぼ毎日来て、愚痴をぶちまけ、会計の時はいつも太っ腹。
年齢は私より一回りくらい下。大企業勤めで、妙に礼儀正しく所作も綺麗で、なんだか世話を焼きたくなる――そんな子だ。

けれど、名前はまだ知らない。私たちは、ただの常連客と店員の関係だから。

三十六歳のフリーターで、恋愛感情がまるでわからない私。
そして、何故だか私と話したがる、会社員で若い彼女。

そんな彼女が、いずれ私にとって生涯のパートナーになるなんて――
この時の私は想像だにしていなかった。


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全70数話を予定。完結まで書き終えています。
毎日朝8時に更新予定です。