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本作のキャラクター設定について:
本作の最大の長所はキャラクター設定にあります。もちろん、すべてのウェブ小説がスマホ世代の注意を引きつけるためには、特色あるキャラクター設定が必要不可欠です。タイトルと呼応するように、本作のヒロイン「荊」という名前は、『眠れる森の美女』の物語で姫を刺した茨に由来しています。そして作者は、彼女の外見描写においても「姫」の印象を強調しています。もちろん、荊の外見を精密に描いたわけではありませんが、彼女の体香や極端に派手な洋風の服装によって「姫」の感覚を表現することに成功しています。荊が時雨に数万円を時給として平然と支払えるほど超富裕であることも、この印象をさらに強化しています。
一方、ヒロインの雨海時雨は、一般的なライトノベルにおける一人称視点の主人公であるため、その印象はそれほど鮮烈ではありません。しかし作者は、彼女の優しく包容力があり、また心の弱さを併せ持つ性格をきちんと描き出しています。これは古典的ではあるものの、荊の予想を超える言動と必要な補完関係を形成しています。荊は「姫」というキャラクター像が示唆するように、第一部の中盤で不眠の原因を明かす際、『眠れる森の美女』のモチーフと関わる過去を語ります。より具体的には、彼女がわがままで強引に時雨へ要求を突きつける性格にその特徴が体現されています。そして時雨は、当然のように徐々に陥落していきます。先に述べた「契約系百合」の解説にもあったように、最初から「強度の高い交流」によって関係が築かれ、普通の関係に移行しようとした時には、すでに互いに大きな感情的基盤が積み重なっていることに驚かされるのです。
挿絵を見たいと思う理由は、好きな小説のキャラクターが実際に動き出した姿を視覚的に確認できるからです。これは小説が生き生きと描けていないという意味ではなく、むしろ作者がキャラクターを鮮明に描き出しているからこそ、読者はそのイメージをさらに具体的に見たいと欲するのです。つまらない作品であれば挿絵を見たいと思う前に投げ出してしまいます。仮に挿絵があっても、つまらない作品では「文章が絵に釣り合わない」とか「挿絵に救われた作品」などと思われてしまいます。文字によるキャラクター造形と美しい挿絵の順序を取り違えた作品はすでに山ほどあり、例を挙げるのも簡単でしょう。
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本作の関係性について:
本作の関係性描写は、独自の雰囲気を見事に作り出しています。切り口として採用されたのは「あなたでなければ眠れない」という特別な関係であり、二人の関係は共に眠ることや「相手が安心感をもたらす」「もう一方は不安定で、安定を必要としている」という要素から展開していきます。
百合表現はここまで発展してきた以上、新人がただ古典的な関係をなぞるだけでは読者を惹きつけることはできません。しかし、特別な関係を書くだけで安泰というわけでもありません。重要なのは、その関係に「彼女たちだけの代替不可能な感覚」を与えられるかどうかです。受賞歴のある犬甘先生や羽田先生はもちろんその点を達成していますが、本作『眠れる森の美女』もその水準に迫っていると私は考えます。
荊と時雨のような「お姉さん的存在が女子高生を包み込む」関係は確かに既視感を伴います。しかし私は、これを他の作品と安易に比較できるとは思いません。既視感の部分を具体的に言えば、「犬系の女子高生」と「少しコミュ障だが実は美人でとても包容力のあるお姉さん」のやり取りです。これは不樹先生と凛の関係性に似ていますが、両者はやはりまったく異なるものです。
大体このような感じで、現在kakuyomuでは無料で読めます。ぜひ皆さんも作品をフォローしたり、コメントを残したりして応援していただければと思います。
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書籍化おめでとうございます、とても素晴らしいですね。楽しみにしています!
社会人×高校生モノとか大好きなんですがね、今まで読んできた中でもジャンルのトップスリーに入るくらいには面白いです。そんなにシリアスな描写はなくて、サクサク読めるのと、文章が上手なので読むのがとてもストレスフリー、むしろ読んでてどんどんストレスが解消されます。癒し小説枠です。
もちろんストーリーも抜群に良くて、読んでいると頬がニヤニヤしてしまうのでひとりの時に読むのがおすすめですね。
作品のテーマの一つである不眠症という症状には自分も過去にかかわりがあったので、うんうんと頷きながら読んでいました。いばらちゃんを見ながらよかったねぇ…なんて謎の親目線になっていました。気持ちが悪いですね。
長くなりましたが作品は大変面白いので、ぜひ一読を薦めます。おススメです。