怪談とは、すなわち語り手の怪しい話である。

夜更けのバー。
そこで男が語るのは、不可解な体験。

深夜の帰り道、押しボタン式の横断歩道で信号を待ち、渡ろうとした瞬間に猛スピードの車が突っ込んで来た。
驚愕の中、男は声を聞く。
そんな物語だ。

本編のほんとうの展開は、男が怪談を語り終えた時点。
話を聞いていた主人公と店のマスターとの会話から始まる。

〝怪談そのもの〟と〝怪談を聞いた話〟
この二重構造こそが本作の白眉である。

怪談とは、人が語らなければ無かったこと。
怪談とは〝起きたこと〟ではなく〝語られたこと〟
怪異は語られて初めて怪異となり、怪談となる。
本編は、怪談の本質をついた伝聞の構造と語り手と聞き手、二人の存在に係る物語である。

読んで試して欲しい。
本編を読んだ誰もが、その洒落た語り口に心地よく酔いしれるはずだ。

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