〝祝い〟という本来とは異なる意味に用いる言葉を発して、他者の人権を容易く踏みにじる者たち。
その異様な恐怖を描いたのが本作だ。
作中で、ある特定の人々が突然発する異様なテンションと、場違いなほど大きな掛け声。そして鳴り響く太鼓の音。
まるで祭のような光景だ。
一歩間違えれば、滑稽にも映る狂態だろう。
だがその奇態な行動が、本作を読む者へ理屈では説明できない怖さを与える。
怖さを支えているのは、異様な集団が共有する論理と信仰、そして慣習である。
中でも印象的なのが、村野茂という人物だ。
彼は終始穏やかな笑みを浮かべながら、あまりにも酷い真相を淡々と語る。
異様な因習を何ひとつ疑うことなく当然のものとして受け入れている。
彼の姿は、その土地だけの価値観を社会全体へ押し広げようとする歪んだ意識を体現しているようだ。
そして本作は、読み終えた後も物語がすべて終わったとは感じさせない。
むしろ、これから主人公を待ち受けるさらなる災禍を暗示していると感じるはずだ。
法も倫理も通じない集団の奇行は終わらず、祝賀の恐怖は主人公の日常へと浸食し続ける。そう予感させるのだ。
本作を読み終えた者は〝おめでとう〟という何気ない言葉さえ、不安に感じるようになるかもしれない。
誰にとっての祝いなのか、誰が何を祝っているのかを確かめたくなるかもしれない。
いやきっと、そうなる。
知らない土地の見知らぬ集団、そのものが恐ろしく思えてくるに違いない。
本作は、そんな無類に嫌な読後感が後を引く因習ホラーなのである。
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