概要
歯医者で左手、上げられる? 上げた人から、痛みが消えていく。
「痛かったら、左手を上げてくださいね」——歯科衛生士の杉浦沙織が勤める医院では、院長がこの一言を、一人の例外もなく口にする。器具の位置から患者の口癖まで書き留める記録魔の沙織は、ある日、妙なことに気づく。治療のあいだに左手を上げた患者だけが、そのあと「どこも痛くない」と言い出しているのだ。長年の腰痛が。膝が。肩が。まるで、消えてしまったように。
半年分の記録を突き合わせると、法則ははっきりしていた。左手を上げた人だけ、痛みが消える。上げなかった人には、何も起きない。そして——他の医院で同じことをしても、何も起きない。この現象は、この医院だけで働いている。
痛みが消えるとは、警報の鳴らない身体になるということだった。傷に気づかず、重症化してから運ばれる患者が出はじめる。噂は口コミサイトから
半年分の記録を突き合わせると、法則ははっきりしていた。左手を上げた人だけ、痛みが消える。上げなかった人には、何も起きない。そして——他の医院で同じことをしても、何も起きない。この現象は、この医院だけで働いている。
痛みが消えるとは、警報の鳴らない身体になるということだった。傷に気づかず、重症化してから運ばれる患者が出はじめる。噂は口コミサイトから
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