「あなたは、どこで違和感に気づきましたか?」
読み終えた今、このキャッチコピーの意味を改めて噛みしめています。
恋人とのやり取り、常連が集う店、ホテル、家族写真、レビュー、配達など、出てくるものはどれも私たちの日常からそう遠くありません。
だからこそ、その中にほんの少しだけ混ざった「何かがおかしい」という感覚が怖いです。
自分で違和感を探しながら読む楽しさがあり、何気ない言葉や記録に「ん?」と引っかかって、少し前まで当たり前だと思っていたものまで疑わしくなってくる。この感覚がクセになって、気づけば「今回はどこだ?」と身構えながら読んでいました笑
違和感を見つける楽しさと、気づいてしまった後のゾクリとする感覚をたっぷり味わえる作品でした!
各話に登場する人物たちが、物語中に直面する違和感。「これはただの勘違い」、そう思い込んで、いや自分に言い聞かせてそのまま進んでいく。その先に待つものは……。
「違和感を無視しなかったらよかったのに」と登場人物に対して思うこともあるでしょう。でも、現実の私たちも彼らを非難できません。「このままでいいのか」「一度立ち止まらないと」「一旦冷静になろう」という考えが一瞬よぎったとしても、その違和感を見ないふりをすることはありませんか? 自分が今手にしている平穏な日常、表面上の幸せを失くすことを恐れ、その違和感に気づかないふりをする。そうして、不穏な道へとどんどん進んでいくのは、経験ありませんか?
違和感は、いつも小さな顔をして現れる。
友人の歌詞に残された、知っているはずの夜。
自分のためだけに空けられた、常連の席。
恋人からの返信までに空いた、わずかな時間。
誰も住んでいないはずの、隣の部屋。
一人で予約したはずなのに、用意されている二人分の食器……。
どれも最初は、気のせいで済ませられる程度の違和感だ。
けれど本作は、その小さな綻びを決して見逃さない。
登場人物が目を逸らした理由まで丁寧に拾い上げ、
やがて日常の何でもない景色を静かに反転させていく。
怖いのは、怪異や犯罪そのものではない。
愛されたい。必要とされたい。許されたい。自分だけの居場所がほしい。
そんな誰にでもある人の感情が、違和感を飲み込む理由になってしまうことだ。
派手に驚かせるのではなく、読み終えたあとで、最初の一文から読み返したくなる。
日常と心理の隙間へ細い針を差し込むような、
極上のサスペンスホラー短編集。
その違和感は、たぶん正しい。
けれど、正しいと気づいたときには、もう日常には戻れない。
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