美しい理念を掲げる介護施設と、そこで浮き彫りになる現実の歪みを冷徹に描いた社会派サスペンスの傑作です。
認知症介護の限界、追い詰められる家族、そして善意の制度が孕む構造的な矛盾へと容赦なく切り込んでいきます。
本作の白眉は、勧善懲悪では決して片付けられない重層的な人間描写です。
正義感を胸に行動する主人公、一切のブレを持たず自らの信念を貫くキーパーソン、そして親を愛しながらも精神を摩耗させていく家族たち。
登場人物の誰もが怪物ではなく、それぞれの持ち場で懸命に生きているからこそ、逃げ場のない葛藤と圧倒的なリアリティが胸を締め付けます。
物語が進むにつれて読者が突きつけられるのは、単なるサスペンスの謎解きにとどまらない「社会の欺瞞」そのものです。
法と倫理の狭間で揺らぐ法廷劇、極限状態の心理描写は息を呑む緊迫感に満ちており、ページをめくる手が止まりません。
決して遠い世界の絵空事ではなく、いつか自分自身や大切な人が直面するかもしれない現実としての恐怖と問いを投げかけてくる、今まさに読まれるべき必読の一作です!!
介護にすり減る家族の現実と人間の尊厳という重たい命題へ、神山達也と園崎宗一郎の二人の医師を通じて真正面から切り込んだ息を呑む社会派ドラマでした。
耐圧カプセルやラベンダーの芳香といった巧みな設定が、外傷を残さず美しく終わらせようとする狂おしいほどの慈悲と重なり合って胸を締めつけます。
命を繋ぐことだけが正しいのか、壊れゆく愛を前に人は何を選べるのかという問いが、現場の泥臭い葛藤とともに生々しく迫ってきますね。
善悪の物差しでは割り切れない人間の弱さと切実な祈りが最後まで丁寧に紡がれていて、読後もしばらく静かな余韻から少しの間抜け出せそうにない作品でした。
その節はお世話になりました。m(_ _)m
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最初は認知症の人も家族も安心して暮らせる理想の街の話なのかなと思ったんですが、読み進めるほど、その“理想”という言葉がだんだん怖くなってきます(゚Д゚)
幽霊や化け物が出てくる怖さじゃなくて、制度だったり、善意だったり、「本人のため」という言葉だったり。
現実にも普通にありそうなものが少しずつ歪んでいくので、むしろこっちの方が怖い。
介護する家族の苦しさ、本人の尊厳、自由、安全、社会がどこまで責任を持つのか。
どっちを選んでも何かを失うような問題がずっとついてきます。
読んでいる途中でそれは間違ってるだろと思ったはずなのに、別の立場から見ると簡単には否定できなくなったりして、自分の中の正解まで揺さぶられる感じがありました。
綺麗なラベンダーの景色と、その裏にある冷たさのギャップも含めて、読み終わったあとにタイトルをもう一度見たくなる社会派サスペンスでした。
綺麗ごとが、いちばん怖い場所になる。
ネットに流れた脳外科医の「死の遺言ビデオ」。高級サナトリウムで、老医師は認知症の妻を抱きしめたまま息絶えていた。なぜ死を選んだのか。配信は介護、尊厳、生きることと終わることを社会に問う。数か月後、その問いは答えを得ないまま忘れられ、遺志を見届けたもう一人の医師が動きだす。
社会派サスペンスとしての骨格がはっきりしています。身体拘束ゼロを掲げる理想の施設、正しい言葉だけを積んだ現場、正義と現実がぶつかる心理戦。悪人がいないのに背中が冷える、という既存レビューの指摘がそのまま魅力です。善も悪も途中でひっくり返るので、読み手の経験によって見え方が変わる。
初見向けの時短ルートがあるのも親切です。エンタメとして先を予測しながら読めて、読後に介護と尊厳と「こうあるべき」の危うさが残る。綺麗ごとに疲れた人へ、と概要にある通り、遠い未来の話には見えません。あなたは、どこに怖さを感じるか。
ラベンダーの里という架空のサナトリウムを舞台にして、介護問題という現代日本の抱える闇を浮き彫りにしていくお話です。
もちろん同施設は架空の物なのですが、現実にあるのではないか?その施設を望む人たちが現実に存在するのではないか?と思わせるほど、施設を巡って自分の正義や思いを通そうとする、リアリティを持った登場人物たちの心理描写が、丁寧に描かれています。
誰もが通る道となる可能性が高い『介護する』、『介護される』という時。
ジャンルとしてはホラーだそうですが、エンタメという枠を超え、自身の、日本の未来について思いを馳せずにはいられなくなる……そんな深いテーマを持った作品です。
いろいろなことを、考えさせられて、そしてゾッとさせられる作品です。
この作品に、誰もが「悪」だと言い切れる人物は登場しません。
同様に「善」もまた。
なんなら、読んでいるうちにその印象がひっくり返ることがあります。
きっと、読み手がどんな経験をしてきたか、あるいはどんなふうに思考してきたかでこの作品は見方がかなり変わります。
どんな作品でも多かれ少なかれ読み手のこれまでの人生や生き方で受け取り方が変わるということはあると思うのですが、ここまで影響するのは、この作品が間違いなく現実社会の暗がりに焦点を当てているからなのでしょう。
あなたは、どこに怖さを感じましたか?
ひとこと紹介、単体では意味が分からないですよね。
すみません。
レビューは読了後に書いています。
この作品、介護を題材として、作品テーマ自体が非常に興味深いのですが、それだけではなく、エンタメとして面白いです。
特に印象に残ったのが、読者心理の誘導の巧みさ。
「どうなるの?」や「嫌な予感がする。」と思わせておいて、読み進めると見えていたものの意味が変わる。
なので、先を予測しながら読む楽しさがあり、物語そのものに引っ張られて最後まで読んでしまいました。
その一方で、読み終えたあとには、認知症や介護、尊厳、社会制度について少し考えさせられる。
しかし、考えさせるだけでも、「問題提起」だけで終わる小説でもなく、読者を物語の中に引き込んで楽しませる作品だと思います。
そして読了後、最終話にレビュアー(sutea1)も感想をコメントしています。
「シャカチキ」の意味も、ぜひ確かめてみてください。
重いテーマを扱いながら、最後まで「次はどうなる?」と思わせて読ませる力のある作品でした。
とても面白かったです。
最初は「認知症の人が自由に暮らせる理想の街」のお話なのかな、と思って読んでいたのですが、途中から「ん? これ、本当に理想郷なの?」と背中がじわじわ寒くなりました。
特に怖いのが、悪い人がほとんど出てこないところです。鍵を掛けない、拘束しない、本人の意思を尊重する。言葉だけ聞けば全部正しいのに、それを徹底するとこんなにも怖くなるのか、と驚きました。
認知症の方は派手な色や目につく物に注意が向きやすい場合があるそうですが、作中ではそんな知識まで「仕掛け」に見えてきます。赤と黄色のレバーなんて、私でもちょっと触りたくなります(笑)。
主人公の真城さんと一緒に疑ったり、逆に「自分のほうがおかしくなっている?」と迷ったりできるのも面白いです。
介護、自由、尊厳、愛情。重たいテーマなのにサスペンスとしてぐいぐい読めます。答えが簡単に出ない物語が好きな方には、ぜひ読んでほしい作品です。
まず設定からして、土台からして面白いです。
「これは一体、どんな物語なんだろう」と思わせる世界観や題材がしっかりしていて、見た感じからして「面白そうだな」と感じるのですが、実際に読み始めてみると、内容の密度も高いと思います。とても練られていると思います。
単に面白そうな設定を置いているだけではなく、その設定をどう物語として動かしていくのか、登場人物たちの立場や思想、社会そのものへの問いかけまで含めて、かなり丁寧に組み立てられている印象があります。
そして、正直なところ、ぼくの文章力では解読が及ばない、……文豪の文章のようです。
「これはこういう意味なのだろうか」と考えながら読んでいるうちに、さらにその奥に何かあるように感じられる。表面的なストーリーだけを追って終わる作品ではなく、読者側にも考えることを要求してくるような奥行きがあります。
だからこそ、「名実ともに」というやつですね。
見た感じから面白そうなのと、読んでみると内容も練られている。つまり、外側だけではなく中身までしっかり作り込まれているという、何重かの構造になっていると思います。
重いテーマを扱っている作品だからこそ、その重さに負けないだけの構成や文章の力がある。読めば読むほど「なるほど、そういうことか」と考えさせられる作品でした。
これは、じっくり腰を据えて読む価値のある作品だと思います。
文章のレベルの高さ、内容の深さはもちろんなのですが、読破後の重厚感が残り続けます。作品から放たれる圧倒的な存在感。
介護経験者だからこそ分かる痛み。介護する側の大変さはもちろん、近所からの苦情、嫌がらせにも対処しなければならない。介護する側の精神的苦痛は計り知れないものです。介護者が精神的に病み続ける気持ちも分かります。
この物語が多くの人に触れ、行政が動いてくれることを望みます。行政側で勤めている方の話も聞く機会があり、高尚な心を持っている人が数多くいても、結局、実権を握っているのが、恵まれた環境で生きてきた人間。財政難を抱える行政が多く、追い詰められている人間を救えない矛盾。常に憤りを感じています。