概要
月から戻ってきた娘――"推し作家"は、私を拾った鬼神だった
幽霊や虫、蛇が苦手なように、月が苦手だった。
何もない長閑な田舎の村。珠依にとって、近所の竹林の奥に暮らす作家が書く、毎月一日に発売される文藝雑誌の連載小説『月の路』を読むことは楽しみであり、六年間で染みついた習慣であった。
その作家・霧生響は、変わり者。煙草ではなく煙管を好み、黒い羽織を着る。珠依が赤ん坊の頃から十八年――小皺ひとつ、白髪の一本さえ増えない、変わらぬ二十代のような美しい容姿。時折金色に光る目――。
口は悪い上に素っ気ない、愛想もない。けれど、分かりにくい優しさを見せる、兄のようなその存在に、珠依は淡い心を密かに抱いていた。
高校の卒業式の朝――珠依の十八歳の誕生日、そして『月の路』が最終回の日。古びたノートの山を残し、霧生は何も告げず忽然と姿を消す。
そこに綴られて
何もない長閑な田舎の村。珠依にとって、近所の竹林の奥に暮らす作家が書く、毎月一日に発売される文藝雑誌の連載小説『月の路』を読むことは楽しみであり、六年間で染みついた習慣であった。
その作家・霧生響は、変わり者。煙草ではなく煙管を好み、黒い羽織を着る。珠依が赤ん坊の頃から十八年――小皺ひとつ、白髪の一本さえ増えない、変わらぬ二十代のような美しい容姿。時折金色に光る目――。
口は悪い上に素っ気ない、愛想もない。けれど、分かりにくい優しさを見せる、兄のようなその存在に、珠依は淡い心を密かに抱いていた。
高校の卒業式の朝――珠依の十八歳の誕生日、そして『月の路』が最終回の日。古びたノートの山を残し、霧生は何も告げず忽然と姿を消す。
そこに綴られて