『服の下を透視する能力を得たら、あなたは何をしますか?』というタイトルを見れば、多くの読者はまず“別の方向”を想像するかもしれません。しかし本作は、その予想を心地よく裏切ってくれる作品です。
主人公が得た能力は、単なる衣服の透視ではなく、人間の内部構造そのものを視認できる力。骨格や筋肉、身体の状態が見えるからこそ、彼は鍼灸師・マッサージ師として異才を放っていきます。その描写は単なるご都合主義ではなく、生物学的・医学的視点に裏打ちされており、読者を納得させるだけの説得力があります。
能力で派手に「無双」するのではなく、能力をどう活かし、どう積み重ねていくかを描く。その地に足のついた展開が、この作品の最大の魅力です。ファンタジー要素の勢いだけで押し切る物語とは異なり、背景と理屈がきちんと存在する。だからこそ、物語に厚みが生まれています。私はこうした、設定に説得力のある作品が好きなので、本作はとても面白く感じました。
一方で、猫好きな描写がやや繰り返される点や、ヒロインとのラブコメ展開にやや強引さを感じる部分もあります。ただしこれは好みの問題でもあるでしょう。
タイトルの印象だけで敬遠するのは、少しもったいない作品です。能力ものにリアリティや論理性を求める方ほど、思いのほか真面目に読まされるはずです。