概要
怒ってもいない。狂ってもいない。ただ、仕事をしていた。
戦後の奈良。元兵士の親父が全財産を注ぎ込んだ黒い種牛が、ある夏の朝、群れを皆殺しにした。
俺はあの日、親父の背中にしがみついて、血の縞に染まった牧草地を駆けた。種牛の目は怒っていなかった。狂ってもいなかった。ただそれが自分の仕事だとでもいうような顔をしていた——まるで何かの使いのように。あるいは何かの罰のように。
なぜ種牛は狂ったのか。親父は夕暮れの空の何を見ていたのか。ガマはなぜ死ぬまで笑い続けたのか。
わからないまま、俺は親父と同じ年を越えた。
俺はあの日、親父の背中にしがみついて、血の縞に染まった牧草地を駆けた。種牛の目は怒っていなかった。狂ってもいなかった。ただそれが自分の仕事だとでもいうような顔をしていた——まるで何かの使いのように。あるいは何かの罰のように。
なぜ種牛は狂ったのか。親父は夕暮れの空の何を見ていたのか。ガマはなぜ死ぬまで笑い続けたのか。
わからないまま、俺は親父と同じ年を越えた。
ここまでの歪みに耐えてくれて、ありがとう。
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- ★★★ Excellent!!!星を見る。只、それだけが。
終戦後の奈良を舞台に繰り広げられる、
戦場から復帰した父親が興した畜産業の
苦い顛末…。
それは新たな地平へと足を踏み入れた者に
容赦なく振り下ろされる鉄槌。
恰も、賽の河原で積む小石の如く。
ヒトは強い。しかし、その強さを下支えする
ものとは一体、何なのか。
凶事は無情にも全てを奪ってしまう。
それは、分析や検証などでは答えは出ない。
人の強さも又、何ものにも推しはかる事は
出来ないのだろう。
さて。
この 楠本ラリアット なる作者。
とにかく 物凄い作品 を描く。
静謐に、無機質に、冷たく生々しく、或いは
穏やかて心地よい絶望、不変である刹那を。
どの作品も…続きを読む