空の見方がかわる物語

言葉が通じないやるせなさ。
僕は二人に会いに行くことも思いを伝えることも、出来ない……

最後まで静かで、やさしくて、そしてとても残酷な物語でした。

巨人の女と老婆、言葉の通じない存在たちに守られながら生きる“僕”の視点が、最初から最後まで一切ぶれない。そのため、世界の仕組みや真実が説明されなくても、読者は迷わず感情だけを辿ることができます。

特に印象的だったのは、「助けられているのに、想いを伝えられない」という無力感です。
恐怖から始まった存在が、いつの間にか居場所になり、家になり、それでもなお越えられない距離として残り続ける。その切なさが、説明ではなく“匂い”や“温度”として描かれていました。

後半、成長とともに視点が変わり、言葉が通じた瞬間の震え。
ここで初めて明かされる真実は、驚きというよりも、「ああ、そうだったのか」と胸に沈む納得として届きます。だからこそ、別れと再会の場面が美しく、そして少しだけ痛い。

派手な展開はありませんが、
誰かを想う気持ちが、姿を変えて受け継がれていく——
そのことを、これほど静かに、優しく描いた物語はなかなかありません。

読後に残るのは感動というより、
「ちゃんと届いた」という安堵でした。

とても好きな一編です。

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